2012 Fiscal Year Research-status Report
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24700020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 一孝 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (10583627)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プログラミング言語 / プログラム変換 / 関数プログラミング / 領域特化言語 / プログラム逆計算 |
Research Abstract |
本年度では,「一対一でない相互変換のためのプログラム逆計算」のケーススタディの一つとして,整形出力器から構文解析器を導出する基礎的なアイデアをまとめ,また実装を行った.プログラミング言語の処理系を実装する際に,整形出力器と構文解析器を実装することが多い.またそういった際に,特に実装の初期段階においては言語の構文がしばしば変わることがある.その際,整形出力器と構文解析器を互いに対応して動作するように修正しなければならない.しかし,構文の修正の度ごとに両方を修正したのでは,手間でありまたバグの原因となる.本研究の成果を利用することにより,整形出力器から自動的に対応する構文解析器を得ることができるため,このような問題を解消することが期待できる.本研究において,入力となる整形出力器は,Haskellにおける標準的な整形出力器作成法と同じように,整形出力結合子を用いて記述される.通常の整形出力器との主な違いは,本研究において入力となる整形出力器が効率的な構文解析器の導出を保証するためにいくつかの制約が入っていることと,整形出力の記述だけでは情報が不足しているのでいくつか構文解析のための情報を含むことである.この成果は,プログラミング言語理論分野にて評価の高い国際会議の一つである, European Symposium on Programming (ESOP)に採択された. また,昨年度に発表した逆計算の研究をまとめ,論文誌「Higher-Order Symbolic Computation」に投稿し,採録が決定した.この論文は,主には特定のクラスのプログラムの逆計算が多項式時間で行うことができることを示したものである.このような知見は,一対一の場合,一対一でない場合のともに,現実的な逆計算の適用範囲を広める上で有用であろう.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は,「一対一でない相互変換のためのプログラム逆計算」についてのケーススタディを行うことであった.上記「研究実績の概要」にまとめた通り,今年度において研究代表者はそのケーススタディである「整形出力器からの構文解析器の導出」について研究を行い,とりまとめ,そして評価の高い国際会議で発表することができた.以上の状況から,研究計画はおおむね順調に遂行できているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
25年度で行うことは,主には以下の二つである. まず,一つは「整形出力器からの構文解析器の導出」のさらなる発展である.24年度の研究において,基礎となるアイデアは示したものの現実的な場で利用する上ではまだまだ理論面での課題も多い.これを押しすすめることにより,「一対一でない相互変換のためのプログラム逆計算」において知見が得られることが期待できる.課題の一つは,あたえる整形出力器によっては,構文解析結果が複数になるような構文解析器を返してしまうことである.このような構文解析器は少なくともプログラミング言語の構文解析においては望ましくない.そのため,このような整形出力器を与えることを禁じたり,もしくは適切に望ましい構文解析結果を選んだりする機構が必要となる.また,得られる構文解析器の表現力の向上も課題の一つである.本年度に行った研究では,たとえば,PythonやHaskellなどのインデントでブロック構造を表現する言語は取り扱えない.その他,重要な課題の一つは整形出力器の記述性の向上である.効率的な逆計算の保証のため入力となるプログラムには制限を加えたい一方,制限が強過ぎると逆計算の適用可能性や期待されるソフトウェア生産性の向上において問題が生じてしまう. もう一つは他のケーススタディの議論である.候補としては,圧縮と展開の例や,双方向変換(通常の変換と変換後のデータに対する変更を元のデータへの変更に書き戻す変換の組)の構成についてを考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に計画していた海外出張が,急遽別経費を当てることとなったため,その分を次年度に繰り越した.繰り越し分は,計算機を購入するか,また別の国内外の出張に利用する予定である.
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