2013 Fiscal Year Research-status Report
高水準かつ安全なプログラミング言語間連携機構の実現
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24700021
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上野 雄大 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (60551554)
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Keywords | プログラム言語 / プログラミングパラダイ / コンパイラ / 関数型言語 / Ruby |
Research Abstract |
本年度以降の研究実施計画は,より高度な言語間連携機構の実現と,Webアプリケーションなど実用規模の複雑さを有するアプリケーションの開発を通じた連携機構の評価であった.この計画の達成を目指し,本年度は以下の研究を実施した. (1) シェルスクリプトとの連携方式の洗練.昨年度の研究実績から得られた知見に基づき,昨年度に構築したシェルスクリプトとの連携機構および型主導コンパイルアルゴリズムの再検討を行い,形式的により優れた方式への洗練を行った.特に,シェルスクリプトに与える型注釈とシェルスクリプトの入出力との関係をより明確にし,さらにシェルスクリプトとの連携を含む型付き関数型言語のプログラムにおける型安全性についてより精密に検討した. (2) オブジェクト指向スクリプト言語Rubyの形式的意味論の構築.本研究課題では,動的型付けオブジェクト指向言語Rubyと静的型付け関数型言語の系統的な連携を目指している.Rubyの形式的意味論の構築は,その達成に向けた基礎研究のひとつである.本年度はRubyの言語仕様を詳細に分析し,Rubyの言語機能を制御構造とデータ構造の2つの視点で分割することにより,Rubyの意味論を導く簡潔な計算系の構築に成功した.さらに,この計算系がフルセットのRubyに円滑に拡張可能であることを確認した. (3) 連携機構を持つプログラミング言語におけるWebアプリケーション開発の基盤整備.本研究課題で提案機構を実装する対象言語であるSML#を用いてWebアプリケーションを構築するためのフレームワークおよびライブラリの整備を行い,より大規模な評価実験を行うための準備を整えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたシェルスクリプトの分析および関数型言語との連携機構の構築は,その洗練も含め,すでに構築が完了している.より高度かつ汎用のプログラミング言語との連携に向けた研究についても,Rubyの形式的意味論の構築により,提案の達成に必須となる基礎理論の構築に成功した.以上より,おおむね所期の結果を得られたと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,昨年度までの研究で得られた成果を論文にまとめ,国際学会への投稿を狙う.特に,Rubyの形式的意味論に関する研究については,複雑な言語機能を有する実用言語を理論的に分析する際に適用可能な一般的手法を含んでおり,世界的なインパクトが高い研究であると期待できる.研究成果としての完成度を高めるためには,より網羅的な言語仕様の分析と,完全なRubyの意味論への拡張が必須である.本年度は,これらの課題に取り組み,本研究の論文としての完成を目指す. さらに,本年度は,Rubyの形式意味論に基づき,Rubyと関数型言語の言語連携機構の実現を目指す.具体的な研究項目は以下の3点である. (1) Rubyプログラムの振る舞いを指示するための型注釈の検討, (2) Rubyプログラムを呼び出すスタブを生成する型主導コンパイルアルゴリズムの構築,および (3) SML#におけるRubyとの連携機構の予備的な実装. また,本研究によって構築した言語連携機構を活用したWebアプリケーションを開発する実験を行い,本連携機構の実用性を評価する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会への投稿論文が不採録になったことに伴い旅費の余剰が発生した. 研究費は,研究調査および研究成果発表のための会議参加費および旅費,ならびに研究の遂行に必要なノートPCやソフトウェアなどの消耗品,ならびに書籍など資料の購入に使用する.
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