2012 Fiscal Year Research-status Report
論理推論を基にした合理的秘密分散プロトコルの安全性検証法の構築
Project/Area Number |
24700022
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
長谷部 浩二 筑波大学, システム情報系, 助教 (80470045)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 数理的技法 / 安全性検証 / 秘密分散プロトコル |
Research Abstract |
本研究は、合理的秘密分散プロトコルの安全性検証法を、数理的技法の一つである論理推論を基に構築することを目的とする。そのための方法として、これまでゲーム理論や数理論理学の分野で研究されてきたプレイヤーの意思決定過程の論理的分析手法を用いる。 今年度は、Halpernらによって最初に提案された最も基本的な合理的秘密分散プロトコルを対象に、その分析を行うための論理推論体系の構築を目指した。そのためにまず、他の参加者の行動を推測して自らの利益を最大化させるような意思決定過程を、論理言語によって記述することを目標とした。より具体的には、各参加者の持つ利得関数(プロトコルを実行し終わった時に得られる利得を定める関数)や、コイン投げの結果、さらにはシェアの送付の有無を論理式として表現し、また、これらの事実に関して各参加者がどのような知識を持っているのかや、さらには「他の参加者が知っていることを別の参加者が知っている」といった知識に関する表現を行いうる論理体系の構築を進めた。本年度は、これを知識論理を基に行った。また一方で、このプロトコルの実行過程においては、シェアの送付や各自のコイン投げの結果を他の参加者に伝えるといった情報交換があるため、これを論理言語で表現することも必要となる。以上で述べた要請を満たすものとして、本研究では、代表者によって提案されたpublic announcement logicの派生体系を基に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、代表者らによって先に構築したpublic announcement logicの派生体系を基に、目的とする論理体系の構築を目指した。しかしながら、コイン投げの結果を表現する上で必要となる確率論的な概念を、命題様相論理の一種であるpublic announcement logicのような比較的表現力の弱い体系で行うことが難しく、未だプロトコル分析のために十分な論理体系の構築を進めている段階である。また、合理的秘密分散プロトコルの研究の進展が続いていることから、その研究の調査を行う必要もあり、当初予定していた論理体系の構築を一通り完成するまでに至ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に実施した研究から、目的とする論理体系を構築するためには、特に確率論的な概念をいかに表現するかが課題となっている。当初はpublic announcement logicを基にこれを進めてきたが、平成25年度では、より表現力の強い論理体系を基にすることも視野に入れた研究の遂行を予定している。ここでは特に、Dynamic epistemic logicや、述語論理への拡張を最初の検討課題として考えている。また、論理体系の構築ができたところで、目標としていたマルチパーティプロトコルへと対象を広げることも目指す。さらに、これらの成果を国際会議や雑誌論文等の媒体で発表することを目標に進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、当初目標としていた論理体系の構築まで到達できなかったことから、平成25年度は、なるべく多くの研究成果の発表を目指している。そのための国際会議発表の旅費などに研究費の一部を充てる予定である。また、引き続き、文献調査のための研究資料の購入も計画している。
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