2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700044
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三輪 忍 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (90402940)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究課題では,プロセッサにおける発熱は不均一であり,一部の高温な部分によってプロセッサ全体の動作周波数が制限されてしまうという問題に着目し,発熱を均一化することによってプロセッサのピーク温度を下げ,より高い動作周波数を利用可能にすることを目的としている.発熱を均一化する戦略として,モジュールの複製を用意しておき,モジュールの温度が上昇したら使用するモジュールを切り替える,アクティビティ・マイグレーションに着目した.プロセッサのダイナミック電力はアクティビティに比例するため,アクティビティを他のモジュールへ移すことにより,それまで使用していたモジュールの消費電力は減少し,温度が低下することになる.また,複製を使用して処理を継続することが可能なため,高温なモジュールを冷ましている間も性能が低下することはない.Out-of-Orderスーパスカラ・プロセッサの温度を均一化するため,高温なモジュールから順にアクティビティ・マイグレーションを適用していく方針とした.そのためにまずはさまざまなプログラムを実行した際の各モジュールの温度をシミュレーションにより計測した.当初の計画では新規のシミュレータ開発が必要と考えていたが,上述のように既存アーキテクチャの逐次的な改良によって温度の均一化を目指す方針としたため,性能/電力/面積/温度シミュレータも既存のものを流用することができた.シミュレーションの結果,最も高温なモジュールはALUであることが判明したため,本年度はALUのアクティビティを分散化する方法について主に検討した.通常のプロセッサはALU間でもアクティビティの偏りがあることに着目し,ALU間のアクティビティを均一化する方法も提案した.これと複製を用いてアクティビティを低減する手法を併用した結果,4.8%の面積増加と引き替えに8.1%性能が向上する見込みであることがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画当初はアーキテクチャを根本的に変えざるを得ないと考えていたため,実験環境の構築,特にシミュレータの開発に多くの時間が費やされると考えていた.しかし,既存のアーキテクチャに逐次的な改良を施すことによって温度の均一化を目指す方針に転換したため,性能/電力/面積/温度シミュレータなど,実験環境については既存の資産を利用することが可能となり,実験環境の開発に費やされるはずであった時間を大幅に削減できた.これにより,本研究課題の根幹である「如何にして性能を妨げることなくアクティビティを分散化するか」という課題に集中して取り組むことができた.実際,平成24年度には2回の研究会発表と,また残念ながら採録には至らなかったが1回の国際会議への投稿を行っており,非常に速いペースで研究が進行していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
上述のように,本年度はALUについてのみアクティビティを分散化する方法を検討し,ALUのピーク温度をかなり低減することができた.だがそれによって,ALU以外のモジュール(例えばレジスタ・マップ表)が最も高温となり,今度はそれによって動作周波数が制限されるという状況が生まれている.そこで本年度は,主にALU以外のモジュールに関して,そのアクティビティを分散化し,それによって動作温度を低減する方法を考えていく.また,上述のようにアクティビティを分散化する基本戦略は,モジュールの複製を配置して処理に応じて使い分けることであることを述べたが,モジュールのレイアウトに関してはまだ考慮の余地があると考えている.平成24年度に行った実験では,複製にアクセスする際のレイテンシが悪化することを懸念し,既存モジュールの近傍に複製を配置していた.しかし,元々存在したモジュールと複製との距離が近いと,オリジナルの使用を中止することによって温度を下げようとしているにも関わらず,使用中の複製から発せられる熱が伝搬してしまい,温度低減効果が抑制されてしまう.オリジナルとの距離が遠くなるように複製を配置すれば上記の影響はほとんどなくなるが,その場合は最初に懸念したように複製のアクセス・レイテンシが悪化する.つまり,複製の配置場所には,レイテンシと温度低減効果のトレードオフが存在する.この最適な関係を探すのも重要な課題のひとつと考えている.上述したいくつかの課題を解決し,平成25年度は,国際会議を中心に論文発表を進めていきたいと考えている.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述のように開発環境は昨年度で概ね整ったため,本年度は,研究を加速するための設備投資に充てる予定である.例えばシミュレーション時間を短縮するための高性能計算サーバを導入することも視野に入れている.また,上述のように本年度は積極的に国際会議での発表を増やしていきたいと考えているため,外国旅費や学会参加費,論文代等の支出が昨年よりも増えると予想している.
|