2013 Fiscal Year Research-status Report
無線センサネットワークにおける自然環境に適応的な通信制御方式の開発
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24700060
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
大島 浩太 埼玉工業大学, 工学部, 講師 (60451986)
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Keywords | 無線センサネットワーク / 環境モニタリング / 通信制御 |
Research Abstract |
環境問題の要因・動態解析などを目的とした環境モニタリングへの利用が期待されている屋外設置型無線センサネットワークにおいて、制御不能な自然環境に起因する外乱と共生可能な、自然環境に適応的な通信制御方式を特徴とする環境適応的無線センサネットワークの実現を目指したもので、センサノードに持たせた環境モニタリングのためのセンサデバイスの計測データから周囲の通信環境を推定・学習し、センサノード間の通信制御に活用することによる通信効率およびネットワーク稼働時間の向上技術の開発および実環境における実践的評価を目的としている。 平成25年度は、この目的を達成するにあたり、前年度に計測した環境情報と通信効率の実測データの活用方法の模索と、実践的評価に向けたプロトタイプシステムの開発を実施した。前者は、通信効率に大きく影響を与えると考えられる要因のうち、季節変化を推定可能な温湿度、通信効率の季節などの長期的な変動と時間平均の安定性に着目した通信制御方式の設計を行った。後者は、近年性能の向上が著しいマイクロコントローラに着目し、その中でも汎用性や対応機器の多いArduinoを用いたプロトタイプシステムを設計・開発した。プロトタイプシステムは、Zigbeeおよび3G無線通信機能とセンサデバイスによる環境情報の計測、SDカードへの記録機能を有したハードウェアである。それを、アンテナを外部に設置できるよう加工した耐環境箱に格納した。プロトタイプシステムの耐環境性能を確認する実環境における稼働実験を実施し、機能が正常に稼働していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、すでに運用中の実環境における通信環境モニタリングの基礎データの収集の計測をはじめ、(1)これまでに蓄積した計測データの分析結果を踏まえた通信制御方式への活用方式の検討と通信環境を考慮した通信制御方式のモデル化、(2)実践的評価に向けたプロトタイプシステムの開発を実施した。(1)では、2台の無線センサノード間での通信制御方式ではなく、無線センサネットワーク全体を1つのシステムとして捉え、システム全体の生存時間を延長できる通信方式の検討を実施した。計測データの中継・伝搬を行う無線センサネットワークでは、中継データ量に比例してバッテリ消費量が増加する。その結果、計測データを集約するシンクノード付近のセンサノードのバッテリが枯渇するfunnel effectが生じ、シンクノード周辺のノードがドーナツ状に停止する状況が生じる。また、実環境において収集した環境情報と通信効率の分析から得られた、季節変化を推定可能な温湿度、通信効率の季節などの長期的な変動と時間平均の安定性に関する成果を活用することで、中継データ量の総計と環境情報を考慮する無線通信効率の良い通信制御方式を設計した。(2)では、実環境における実践的評価のためのプロトタイプ無線センサノードを開発した。プログラマブルな制御が可能で比較的安価に入手可能なマイクロコントローラ:Arduino Dueの上にZigbeeや3G通信モジュールおよびセンサデバイスやストレージを搭載し、それらをアンテナを外部に接続できるよう加工した耐環境ボックスに格納することでプロトタイプシステムのハードウェアを実装した。ソフトウェア面では、搭載した装置の管理機能を実装した。プロトタイプシステムは、2.4GHzの電波の水分吸収現象を考慮し、海上で実装機能の動作検証を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 規模を拡大した実環境における通信制御方式の実践的機能検証 昨年度に開発した無線センサノードのプロトタイプシステムの台数を増加させ、より規模の大きな、実環境における実践的な通信制御方式の機能検証を実施する。本研究の想定している無線センサネットワークは数百台規模であるが、これだけの台数の実践的評価は困難である。そこで、funnel effectの振る舞いを検証するために開発したシミュレータを活用することで、ネットワークを通信効率や電力消費傾向が異なる部分単位に分割し、その部分単位で開発した通信制御方式の性能検証を行う。傾向の異なる部分単位での評価を総合的に判断することで、提案方式の有効性を示す。 (2) 実践評価を踏まえた通信制御方式の改定 前述の実践的機能検証の結果から、通信制御方式をより高性能なものにすべく改良を行う。これまでの実環境における無線センサネットワークの運用経験から、アンテナの感度や見通し距離内の障害物が通信距離や通信効率に影響を与えることが分かっている。提案する通信制御方式が、通信を妨げる要因に対してどの程度頑健であるかを調査し、環境別に適した通信制御方式の模索を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者は平成25年度の初めに現在の組織に異動し、科学研究費補助金の所属研究機関変更届を異動直後に提出した。異動後の組織間の経費の移動に時間を要したことから、経費が利用可能になった時点で本申請の研究分野と内容に合致する国際学会が非常に少なくなっており、結果として国際学会発表用途で予定していた分の経費の使用が困難になった。当初の経費利用計画を順守すべく、その分の予算を次年度に引き継ぐ判断を行った。それ以外の使途については、予定通り進んでいる。 前年度から引き継いだ予算については、当初予定していた国際学会発表などの成果発表予算として利用する。次年度の予算については、当初の計画通り使用する。
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Research Products
(2 results)