2013 Fiscal Year Research-status Report
ネットワーク符号の冗長性・秘匿性を利用した無線マルチホップマルチキャストの高度化
Project/Area Number |
24700079
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野口 拓 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (00388133)
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Keywords | アドホックネットワーク / マルチキャスト / ネットワークコーディング / ネットワーク符号化 / ブロードキャスト / インターネット相互接続 |
Research Abstract |
無線マルチホップネットワークにおいて同一情報を多数の受信者に確実に配信する高信頼・高安全マルチキャスト通信を実現するため,ネットワーク内で情報を符号化することで,情報の秘匿性向上と通信容量の拡大を同時に可能とする新たなマルチキャスト通信方式を開発した.また,提案方式の実機環境下での性能評価を行い,さらに,提案方式の応用例として,インターネット相互接続のためのゲートウェイプロトコルへの適用についても検討した.具体的には,以下の結果を得た. 1、前年度に提案した「複数ユニキャスト経路を並列利用するマルチキャスト経路制御プロトコル」のための「符号化分散アルゴリズム」の提案・評価 提案マルチキャスト経路制御プロトコルによって設定される配信経路に最適化したネットワーク符号化を実現するための「符号化分散アルゴリズム」を提案し,実機環境(スマートフォン,タブレット)での性能評価を行った.性能評価では,既存の無線マルチホップネットワークでトラヒック量の大部分を占めているブロードキャスト通信(マルチキャストの特殊ケースと位置付けられる)を対象とした.性能評価の結果,既存方式と比較して通信の信頼性・安全性を損なうことなく約20%の冗長トラヒックを削減できることを明らかにした. 2、インターネット相互接続のための無線マルチホップネットワークの拡張 近年,無線マルチホップネットワークはインターネットとの相互接続を想定されており,インターネット相互接続時に2つのネットワークを繋ぐゲートウェイ端末の探索・選択制御プロトコルが精力的に研究されている.多くのゲートウェイ端末プロトコルでは,端末の探索・選択にマルチキャスト通信を利用しているため,本研究の提案方式を適用可能である.そこで,提案方式をゲートウェイ端末プロトコルに適用した場合の有効性について,実機検証を行い,応答性能面で十分実用可能であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年度目の研究として,初年度の成果をさらに発展させ,その有効性について計算機シミュレーションおよび実機実装実験を行い多角的に検証するという点については,当初の目的通り達成できた. 一方で,当初の計画と差異が生じている部分として,分散符号化アルゴリズムの機能の簡略化がある.当初の予定では,ネットワーク符号化の分散符号化アルゴリズムに誤り訂正機能を付加する予定であったが,この機能の付加をとりやめた.これは,研究の遅れが原因ではなく,無線ネットワークの同報冗長性により,誤り訂正機能がなくとも十分に高い信頼性を実現できることが確認されたためである. 以上の通り,当初の研究計画と完全に一致してはいないが,研究目的との不整合は生じず,研究自体は順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までの成果により,ネットワーク符号化を利用した高信頼・高安全マルチキャスト通信方式の基本設計及び基本特性の性能評価が完了した.また,本方式を応用例の一つとして,インターネット相互接続のためのゲートウェイ端末プロトコルへの適用についても検討した.今後は,本方式の別の応用例として,既存のブロードキャスト通信や災害情報ネットワークへの適用なども検討し,本方式の有効性を検証する.また,各応用における検証については,スマートフォン・タブレットなどの実機を用いた性能評価を行い,ハード・運用環境に依存するシステムパラメータ最適化手法についても検討する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に実機実験用タブレット端末の購入を予定していたが,購入予定品の次期モデル発売が次年度期間中との発表があったため,購入を見合わせた.これは,モデル周期の短いタブレット端末を用いた研究では,実験結果の資料的価値を高めるため可能な限り新しいモデルを利用することが望ましいためである. 当初の計画通り,次年度に繰り越した分については,実機実験用タブレット端末の購入に充てる.次年度分の助成金については使用計画に変更はない.
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