2012 Fiscal Year Research-status Report
推薦システムにおけるユーザの気づきを誘発するインタラクションモデルの開発
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24700091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
土方 嘉徳 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (10362641)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 情報推薦 / 推薦システム / ユーザプロファイル / 可視化 / 気づき / 機械学習 |
Research Abstract |
今年度は,ユーザの気づきを誘発するためのユーザプロファイルの形式的な特性について明らかにした.特に,機械学習アルゴリズムと関連して,どのような形式が良いかについて検討した.具体的には,人間が学習モデルを理解することができるNaive Bayes,決定木,マーケットバスケット分析の3つのアルゴリズムから得られるプロファイル形式について,その理解のしやすさを被験者実験で調べた.その結果,決定木が最も理解しやすいことが分かった. 次に,決定木を用いてユーザプロファイルを構築し,それをユーザに提示することによって,ユーザが自分の興味や嗜好について気づきを得るかどうかに関する実験を行った.この実験のために推薦に用いるアイテムの収集を行った.具体的には,壁紙とオブジェ(置物)の2つのドメインに関する画像を画像共有サイトであるFlickrから収集した.画像はそれぞれのドメインで1000枚収集した.また,コンテンツに基づくフィルタリングを行うため,画像に内容に関するメタデータを付与した. 実験では,被験者は自分のユーザプロファイルを閲覧し,何か気づいたことがあれば,それをフリーテキストで入力した.その結果,壁紙では一人当たり2.0個の気づきが,オブジェでは一人当たり2.5個の気づきが得られた.一つ一つの気づきに対して,有益さと新鮮度を評価してもらった.有益かつ新鮮な気づきを得たユーザは約半数いることが分かった.この実験後,さらにアイテムを評価してもらい,その評価値や評価にかかる時間の変化を調べたが,これらには変化はなかった. このことにより,ユーザプロファイルの提示により気づきは誘発することはできたが,その後の意思決定に影響を与えることはできなかったことが分かる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究の進展であるが,申請当初よりも大きく進展している.その理由としては,実験に用いるアイテムの収集やプロファイル形式に関する基礎検討を,交付内定が出る前から行っていたためである.また,交付前から情報推薦に用いる推薦アルゴリズムの実装を開始していた.このため,交付決定後に,すぐにプロファイル形式に関する調査と,プロファイル提示の被験者実験を開始することができた.これらにより,大幅に時間を短縮することができた. また,当初計画では,ユーザプロファイルを提示する部分を限定することを考えていた.これは,限定することにより,ユーザはその部分について注目し,より多くの気づきを得られるものと考えたからである.研究計画では,ユーザプロファイルのどの部分を選択するのか,それをどのように提示するのかに関する基礎的調査も行う予定であった. しかし,この基礎的調査を始めたところ,ユーザにユーザプロファイルの一部だけ見せても,全体が把握できていないため,その意味を理解することが非常に難しいことが分かった.また,提示方法にそのモデル作成に至った事例の数や,そのモデルを満たす事例の割合などを用いる予定であったが,適切な評価指標が見つけることができなかった.そのため,ユーザプロファイルの部分提示に関する調査が全くなくなってしまった点も,研究の進展を進めた理由である. 一方,被験者実験からユーザの気づきが意思決定の効率化に寄与することはあまりないことも分かった.これも我々の予想を裏切る結果であった.
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Strategy for Future Research Activity |
上記でも説明したが,ユーザプロファイルの部分提示については,ユーザの気づきの理解にはあまりつながらないことが分かった.今年度は,これについては深く調査することは行わないで,プロファイルの可視化とユーザの気づきとの関係について調べた.また,当初はユーザの気づきが今後のユーザの意思決定を効率的にすると考えていたが,被験者実験の結果,明確にそのような関係は見られなかった. これを受けて,今後の推進方策を変更する予定である.意思決定については,アイテムの探索や情報確認をどのようにするかを調べる方が良いのではないかと言う結論に至った.ユーザプロファイルの閲覧により,自分の興味や嗜好について深く知ることができたり,考えることができたりしたが,すなわちそれは,商品をより吟味して購入するようになったり,商品の特徴の確認をより慎重に行うようになったりするため,意思決定のスピードを必ずしも早めるものではなかった.このことから,自身への理解よりも,当該アイテムや周辺アイテムへの理解の方が,意思決定の効率化に影響を与えるのではないかと考えた.今後は,このような当該アイテムと周辺アイテムの情報に関する提示とその探索方法について調査を進めたいと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の使用計画からの大きな変更はない.当該アイテムと周辺アイテムに対する理解と意思決定に関する調査を進めるために,被験者実験に必要な謝金を計上している.また,上記実験を行うには,ユーザがアイテムの特徴空間を探索するようなインタフェースを考えている.このインタフェースとしてどのようなインタラクションモデルを持つべきかを調査したいと考えている.そのインタフェースのプロトタイプを実装するために,プログラムの一部とインタフェース部分実装の外注(アルバイト謝金)を考えている.また,このプログラミングとインタフェースのテストに必要なパソコン及びタブレット端末の購入を考えている. 上記インタフェースには,ユーザはなるべく気軽にアイテムの特徴空間を探索できる方が良いと考える.直接に要求するアイテムの特徴をキーボードがら入力させるようなものでなく,アイテムの特徴的を直感的に伝えるような情報提示とし,その方向性だけをクリックやフリック入力で行えるのようなものが望ましい.これらのことが可能な端末を複数台購入する予定である.
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