2013 Fiscal Year Annual Research Report
音響的特徴に基づく話者交替に関する発話単位の認定基準の構築
Project/Area Number |
24700109
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
石本 祐一 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究情報資料センター, 特任助教 (50409786)
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Keywords | 話者交替 / 韻律 / コーパス |
Research Abstract |
本研究は、会話コーパスに必要とされる発話ラベルの付与を容易にするために、話者交替の起こりうる箇所の識別に有用な音響的特徴を明らかにすることを目的としている。平成25年度は昨年度に引き続き、自発性の高い発話が収録されている2種類のコーパスを用い、発話の区切りを特徴づける韻律変化について対話音声を対象として重点的に分析した。 昨年度の独話音声の分析では、発話全体にわたって現れる特徴として基本周波数(F0)が発話末へ向けて徐々に下降すること、発話末では急激にF0が低下し発話の長さによらずほぼ一定の高さとなることが観察された。また、強い統語境界ではF0の下降傾向のリセットが生じていた。そこで、対話について同様の分析を行ったところ、対話音声でもF0の下降傾向と強い統語境界でのリセットが生じているものの、発話末の急激なF0下降があまり見られなかった。詳細な分析の結果、独話・対話に関わらず自発性の高さと発話末のF0下降の程度には負の相関関係があり、これまで発話末を示すとされていた急激なF0下降が自発性の高い発話では発話末を識別する手がかりとはならない可能性が示唆された。 さらに、韻律を操作した合成音声を用いた聴取実験を行い、対話音声における韻律変化と聞き手の発話末認知との関係について調べた。発話末を特徴づける言語情報である助動詞「です・ます」や終助詞「ね・よ」といった発話末要素との対応についても考慮した実験により、発話末要素が存在する場合は最終アクセント句のF0やパワーの変化が通常と異なると聞き手の発話末の予測に乱れが生じる傾向が観察された。また、最終アクセント句のF0下降が発話末要素の有無を予測する手がかりとなる可能性が示唆された。しかし、発話末要素が存在しない発話においては発話末を予測させる韻律情報は不明であり、音響情報による発話ラベル付与にはさらなる分析が必要である。
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