2013 Fiscal Year Research-status Report
創作活動におけるユーザ状態推定に基づくリファインディング支援
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24700116
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 景子 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (10585756)
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Keywords | リファインディング / ユーザ状態推定 |
Research Abstract |
本研究では,作業自体を妨害することなく制作者について得られる情報を取得し,そこから制作者の状態を推定し,制作物に対してメタデータとして付与するためのインタフェースを構築することを目指している.これを実現するために,(1)創作活動を妨害することなく動き・生体情報を収集および記録することが可能か,(2)その情報をもとにユーザの状態推定が可能か,また(3)それらをメタデータとしてユーザに提示することで制作物のリファインディングが効果的に行えるかの3点を検証することを課題としている. 当初の計画では本年度は(2)までを行う予定であったが,前年度に取り組んだ項目(1)のうち動きデータのみを扱い,項目(2)のユーザ状態推定までを行うシステムを用い,個人毎のモデルを用い状態推定が可能かどうか,推定率が向上するかを実験により評価した.具体的には,動きデータとして(a)キーボードの打鍵リズムパタンを取得する装置を構築し,日記記入時の打鍵情報からその記入時のユーザの感情状態を推定する手法を個人に適用し,状態判別率の評価を行った.また,動きデータとして(b)ペンドローイングの軌跡を取得する装置を構築し,前年度に確立した中級者のドローイング動作の特徴からユーザがよい/わるいと判断するストロークの判別手法を基にシステムを実装した.(a)については,評価の結果,個人毎のモデルを適用しても判別が困難であることがわかった.(b)については個人毎のデータが大量に必要なため,現在システム有効性評価のための実験準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き動きデータのみに着目し研究を行った.先の概要でも述べたが,現在のところ,動きデータを取得しユーザの状態を推定する手法を2種実装し,(a)の感情を推定して日記にメタデータとして付与するシステムについては,項目(2)までの判別精度の評価実験を個人毎のモデルを用いることで再度行ったが,十分な精度が得られなかった.その理由として,刺激画像による感情の励起が不十分であった可能性があること,大規模かつ長期的な被験者実験が行えなかったため,個人の感情毎のデータ量が足りず状態推定のための十分な学習が行えなかったことの2要因が挙げられる.また本実験結果と同様に,既存研究における英語入力時の感情推定精度の高さは,感情による特徴量ではなく個人毎の特徴量が効いているためである可能性があることが明らかとなった. また,(b)に関しては,項目(3)までの内容として,個人毎のモデルを用いてよい/わるいの2種の状態を判別しユーザに提示するシステムを構築した.今後はこのシステムを用いた判別率の評価およびシステムの応用先として学習支援システムの実装・評価を行う.また,新たに動きデータとして工業製品のモデリング時の道具の把持状態を取得しデザイナの状態を判別するシステムを構築予定である.今年度も前年度に続き動きデータのみを対象としたが,動きデータを用いるシステムによる感情推定実験により一定の知見が得られたこと,動きデータを用いユーザの状態判別を行いユーザに提示する新たなシステムを実装したことから,おおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画の大枠では,1年目に項目(1),2年目に項目(2),3年目に項目(3)の予定であったが,本年度は動きデータのみに着目し,(a)については項目(1)および(2)を再実装・再評価をし,(b)については項目(3)のシステムの実装までを行った.そのため申請時の計画と少し変更し,今年度は上述した知見を踏まえ,(b)の評価実験を行うことと平行し,新たなシステムの構築および有効性の評価を行う.具体的には以下の項目で研究を推進する. 項目(1):ドローイング中に計測可能な動きデータからユーザの特徴的な状態変化が抽出できるかを調査する.本年度はドローイング中の動きデータのうち筆圧,ペン先の移動軌跡を取得し状態判別するシステムを実装したが,次年度はそれに加えて他の動きデータ(道具の把持状態,滞空時間や手腕の位置情報など)を,作業を妨害しないよう計測するための装置を構築する. 項目(2):項目(1)で構築した装置を用い,被験者実験によりドローイング中の動きデータの計測を行う.それらの計測データから得られた特徴量がドローイング結果,ユーザの状態とどのようにマッピングされるかを記録する.この過程で,計測データのうち,メタデータを提示するインタフェースの構築を前に,重要なパラメタとなりうるデータの選別(圧縮)およびモデル化を行う.そのマッピングの際に,データの粒度,最終的にメタデータとして提示する感情や意図の種類と数を決定する. 項目(3):項目(2)で抽出されたメタデータをコアデータに付加してユーザに提示するインタフェースを構築する.その後,被験者実験にて,このインタフェースと項目(1)で実装した計測装置を組み合わせ,創作活動が計測により妨害されないか,リファインディングが効率的になったかの2点を評価する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度は,当初の計画では新たに生体センサ(発汗,脈拍,呼吸などを計測する装置)を複数種類試験的に導入し試作システムを実装すること,また被験者数の拡大や長期に亘る評価実験を行う予定であったが,動きデータをベースとするシステムの実装および評価に集中したこと,感情推定実験の結果が当初の予測より悪かったため追加実験を一部取りやめたことから,次年度使用額が生じた. これまでに得られた知見を基に,新たに実装するシステムで用いるセンサ(道具の把持状態,滞空時間や手腕の位置情報などを計測する装置)を導入し,システムを実装・評価する費用に充てる.またこれまでに明らかとなっている知見の公開および今後の研究の方向性を探る情報収集・意見交換を行うために国際学会へ参加する費用に充てる.さらに,これまで収集した膨大なデータを処理・保存するためのデータ処理装置・HDD等の物品購入費に充てる.
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Research Products
(4 results)