2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700117
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒田 嘉宏 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (30402837)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(米国) / 有限要素法 / 生体信号処理 / 機械学習 / 表面筋電図 / 運動推定 / 柔軟物 / 可触化 |
Research Abstract |
本研究では、伝送遅延や計算遅延を補償する柔軟物の可触化手法を確立し、”触知覚的”に高品質な遠隔協働環境の実現を目指す。実施計画に基づき平成24年度は、基本機能(構造計算、生体計測、運動推定)の開発として、柔軟体力学モデルを非線形FEMに拡張し、生体計測システムの構築から運動推定プログラムの開発を行った。構造計算としては、極分解の定理に基づいて変形を剛体回転と微小ひずみに分解し、回転した座標系で有限要素法計算を行うことで、幾何学的非線形性に対応した変形シミュレーションを可能とした。生体計測としては、4chの表面筋電図(sEMG)を計測し、1kHzでサンプリング可能な有線筋電計測システムを構築し、尺側手根屈筋や総指伸筋など手首の回内・回外の運動を計測し、実時間での信号処理が可能なソフトウェアを開発した。運動推定としては、sEMG信号に筋の単収縮応答を畳込むことで得られる疑似張力および手首関節角度・角速度を入力とし、微小時間後の手首関節角度を推定する機械学習モデル(多層パーセプトロン)を再帰的に適用することで、50ms後の関節角度を事前推定する運動推定手法を開発し、実際の運動に先行して筋活動に基づく運動推定結果が得られることが確認された。これらの技術は、高品質な柔軟物遠隔可触化環境を実現するために必要とされる基盤技術であり、次年度以降に行う伝送遅延や計算遅延の補償技術を適用するためのプラットフォームを構築することができた。 また、本課題を進めるなかで、運動制御の知見に基づいた時間変化を仮定することで、sEMGの信号立ち上がりをロバストに検出するアルゴリズムを開発することができ、今後の遅延補償技術の実用化につながる技術開発を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画から、平成24年度は基本機能(構造計算、生体計測、運動推定)の開発を行う予定としており、構造計算については非線形性に対応した有限要素法の実装、生体計測については多チャンネルの表面筋電図を実時間で解析可能なシステムの構築、運動推定については表面筋電図に基づき手首関節角度を再帰的に推定する事前運動推定手法の開発を行ったことから、研究実施が概ね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、基本機能(算法の工夫、反力制御)の開発、および、遠隔協働システムの構築・評価を予定している。算法の工夫(非線形柔軟物力学計算法の開発)については、全要素を一括更新するのではなく誤差が顕著な要素に対してのみ逆剛性マトリクスの部分更新を行うことで、実時間性と変形精度を両立した大変形シミュレーションが可能となる予定である。反力制御法(手運動の事前推定による反力提示)の機能開発については、上述のアルゴリズムによりsEMG信号の立ち上がり時間から実際の運動発生までの時間差を精度よく推定することにより、伝送遅延を補償した柔軟物の反力提示が可能となる予定である。最終的には、複数人による遠隔協働作業への効果を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の備品に計上されている反力提示装置は、本課題で主要な役割を担っており、本課題で必要とされる2台のうち研究室所有のうち使用可能な1台を差し引いた1台を購入する。また、計上されている実験用試料は、生体計測に必須であり、ディスポーザブル電極等を購入する。
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