2012 Fiscal Year Research-status Report
電子透かしにおける視覚的変更可能領域の規定に関する研究
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24700175
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
岩田 基 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70316008)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電子透かし / 視覚特性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、あらかじめ視覚的変更可能領域を規定することによって電子透かし手法の性能を向上させることである。これを実現するためには、(1)電子透かし法の目的に応じた視覚的変更可能領域の検討、(2)視覚的変更可能領域をあらかじめ規定可能な電子透かし手法の検討が必要となる。(1)の項目は(1-a)視覚的変更可能領域の説明可能性の検討、(1-b)視覚的変更可能領域の画質/耐性トレードオフの検討に細分化できる。平成24年度は(1-a)を重視し、理論的根拠の明確な視覚的変更可能領域として、均等色空間を利用した。均等色空間とは、一つの色が空間上の点として定義され、人間の知覚する色と色の違いが、空間上の距離と合致するように規定されている。よって、透かしを埋め込む処理による色の変化が均等色空間上においてある一定の範囲内に抑えられていれば、「人間の知覚に合致した均等色空間上においてある一定以内の変更」であると説明できる。既存の電子透かし法によって均等色空間を利用すると、RGB表色系の画像に変換するときの量子化誤差によって透かしを正しく抽出できないことがあるため、新たに(2)「均等色空間上での変更可能範囲をあらかじめ規定可能な電子透かし法」を考案する必要があったため、これを実施し、10月の国際会議にて発表した。この手法は、視覚的変更可能領域を均等色空間上の距離によってあらかじめ規定することができる。さらに、従来手法では「埋め込みアルゴリズム」であったものを「透かしと透かし入り画素の関係」という条件として部品化し、柔軟性を高めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、おおむね順調に研究を進めることができた。研究計画で挙げた5つの実施項目は、以下の通りである。1.理論的根拠の明確な視覚的変更可能領域の構築、2.従来の電子透かし手法の重み付けなどに基づいた視覚的変更可能領域の構築、3.研究業績3 を用いた視覚的変更可能領域の性能検証、4.視覚的変更可能領域をあらかじめ規定可能な電子透かし手法の検討。1について、均等色空間を用いて色の変化に対する人間の知覚を数値的に扱えるようにした。2について、従来の表色系から見ると、均等色空間は非線形な重み付けをしたのに似た形式となっている。3については、均等色空間を扱えるよう改善を施した手法は画素単位の埋め込みを対象としているため、JPEG圧縮などに対する耐性は十分に評価できなかったものの、従来方式で問題となっていたRGB表色系へ変換するときに生じる誤差に起因する抽出誤りを0にすることができた。4について、概要でも述べたように、「均等色空間上での変更可能範囲をあらかじめ規定可能な電子透かし法」を考案し、国際会議ISTITA2012にて発表した。しかしながら、この手法は様々な透かし埋め込みアルゴリズムを適用できるような柔軟性を備えているものの、画素単位の埋め込みを対象としているという制約もある。この制約は主に計算コストの高さに起因するため、それを改善すべく、この手法の高速化を実現した。高速化した手法については、近々論文として投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の手法では、色に対する人間の知覚特性を画素単位で利用できてはいるものの、平面的な広がりをもった模様(テクスチャ)に対する視覚特性は十分に利用できてはいない。また、一般的に利用されている画像フォーマットであるJPEG形式の状態で透かし入り画像を扱うためには、画素単位ではなく、ブロック単位での透かし埋め込み手法に対応する必要がある。10月に発表した手法では計算コストの高さからブロック単位での透かし埋め込み手法を扱うことはできなかったが、高速化後の手法を用いて、JPEG形式の透かし入り画像を扱え、なおかつテクスチャに対する視覚特性も考慮して、視覚的変更可能領域を規定できるよう手法を改善する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、色の変化に対する人間の知覚特性を、実験的にではなく均等色空間を用いることによって理論的に導入したため、画像評価用のモニターは購入しなかった。平成25年度で予定しているテクスチャに対する視覚特性についても可能な限り数学モデルを導入して理論的裏付けをつけられるようにするが、最終的には相当人数の主観的評価が必要になると予想されるため、設備備品費として画像評価用モニター、謝金として主観的評価実験のためのバイト代を予定している。そのほか、消耗品費として画像に対する攻撃や試料画像の作成に用いる画像処理ソフトウェア代、バックアップ用ハードディスク代、また、論文別刷費を予定している。国内旅費・外国旅費として、情報収集や成果発表のための学会出席を予定している。
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