2012 Fiscal Year Research-status Report
画像認識技術を用いた大腸内視鏡画像の客観的評価手法の研究
Project/Area Number |
24700186
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
野里 博和 独立行政法人産業技術総合研究所, 情報技術研究部門, 主任研究員 (40435764)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 画像認識 / 大腸内視鏡 / 最適化 / 特徴抽出 / 医工連携 |
Research Abstract |
本年度においては、画像認識技術を用いた大腸粘膜の炎症重症度の客観的な評価指標の実現を目指し、まず、医学的な観点における潰瘍性大腸炎の炎症具合による大腸内壁表面の様子の違いを、大腸内視鏡静止画像から幾何学的な特徴として抽出する研究を行った。 具体的には、炎症を示す大腸粘膜表面の様子(血管網の有無や表面の凹凸など)を、抽出する特徴に反映させるため、大腸内視鏡画像から変換されるRGB色空間など様々な色成分に変換し、画像に含まれる幾何学的な特徴をいくつかの数字の組み合わせとして表す高次局所自己相関特徴(HLAC)を抽出した。この抽出したHLAC特徴量を予め医師により分類された重症度ごとにそれぞれ解析し、変換した色成分と炎症の重症度と比較することで、大腸内視鏡画像を重症度別に分類が可能かどうか検証を行った。 本研究では、協力研究者である内視鏡医(以下、協力研究者)から提供された、実際の大腸内視鏡画像データを用いた実験により、各色成分における大腸粘膜表面状態のHLAC特徴量への抽出のしやすさや,重症度間での特徴の違いなどについて検証を行った。この結果、本研究で提案する色成分変換とHLAC特徴により、炎症の様子を特徴量として抽出することができ、重症度ごとに特徴の違いがあることがわかった。 また、次年度以降に向けた取り組みとして、各色成分の組み合わせなどを自動最適化するための最適化手法についても検討を進め、効率的な探索手法の設計指針を得ることができ、テストプログラムを試作した。さらに、平成25年度に予定している高速化研究で用いるGPU計算機を購入し、自動最適化処理のGPU並列計算による高速化の実現に向けた検討を行い、実現に向けた課題の抽出を行った。 なお、この研究成果は、情報処理学会第91回MPS研究会および第12回産総研・産議連LS-BT合同研究会にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、大腸内視鏡画像から大腸内壁表面の特徴を抽出する本研究のベースとなる基本技術の確立を目的としていた。研究の結果、大腸内視鏡画像の色成分情報を解析し、各色成分から抽出した幾何学的特徴であるHLAC特徴を用いた統計的処理により、十分な分類が可能であることを示すことができた。この結果、本研究の提案手法が、大腸内視鏡画像の情報から炎症の様子を特徴として抽出でき、炎症の重症度を分類する客観的な評価手法の実現に向けた基本技術を確立できた。また、検証実験の詳細な分析の結果、炎症の重症度(内壁表面の様子)によって特徴が効果的に反映される色空間が異なることや、色空間や特徴抽出のパラメータを数種類組み合わせることにより精度向上を図ることが可能であることも判り、次年度以降での高速化・高精度化に向けた研究材料を揃えることができた。 一方、次年度以降に予定している高速化研究をスムーズに展開するための予備的検討については、GPU計算機を購入し、並列化の設計指針の検討や目的達成のための課題抽出などを計画通り実施できた。また、協力研究者である内視鏡医の先生方との連携も計画通り行うことができ、内視鏡画像データの蓄積や研究成果のレビューによる医学的観点からのフィードバックを行うことができ、実施計画内での目標達成に向けた研究を順調に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、1年目の研究成果をベースに、色空間等の複数の画像処理条件を組み合わせる画像処理最適化技術の構築と、多変量解析により重症度に適合した評価軸を算出する手法の研究を行い、入力した大腸内視鏡画像から自動的に炎症の重症度を占める客観的な評価手法の完成を目指す。 あらかじめ協力研究者の内視鏡医の先生方に診断していただいた炎症の重症度ごとに抽出した特徴のラベル付けを行い、重回帰分析などの多変量解析手法を用いて、抽出した特徴から重症度に適合した評価軸へと導く変換手法を完成させる。また、新たな大腸内視鏡画像データも追加し、検証実験と協力研究者によるレビューを繰り返し行い、本技術の精度向上を図る。 また、高速化研究においては、最適化処理や画像処理の並列計算による高速化に取り組み、GPU計算機を有効に活用して、画像入力から評価結果の提示までの処理時間の高速化を図り、診断支援技術として実用的な時間での実現を目指していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度における研究費の未使用額は、2013年2月に購入を予定していた協力研究者レビューおよび成果公表時のデモに用いるためのデスクトップパソコン(Lenovo IdeaCentre A520 65971GJ(Corei7モデル))が、発注過程において発売中止になったため、購入することが不可能になり使用予定額が次年度に繰り越された。 そのため、次年度において、繰り越される未使用額を用いて、本年度購入できなかった、レビューおよびデモ用のデスクトップPCの購入を予定している。
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