2013 Fiscal Year Research-status Report
画像認識技術を用いた大腸内視鏡画像の客観的評価手法の研究
Project/Area Number |
24700186
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
野里 博和 独立行政法人産業技術総合研究所, 情報技術研究部門, 主任研究員 (40435764)
|
Keywords | 画像認識技術 / 大腸内視鏡 / 最適化 / 特徴抽出 / 医工連携 |
Research Abstract |
本年度においては、画像認識技術を用いた大腸粘膜の炎症重症度の客観的な評価指標の実現を目指し、潰瘍性大腸炎の炎症度合を分類する画像認識システムを構成する画像処理と特徴抽出の条件を定義するパラメータを同時に最適化する最適化手法の研究を行った。 具体的には、大腸粘膜の血管網パターンと表面の凹凸の違いを強調する画像処理条件と、幾何学的な特徴量である高次局所自己相関(HLAC)特徴の抽出条件を、一括して最適化する遺伝的アルゴリズムをベースとした最適化手法を提案した。本手法では、医師が複数の観点から内視鏡画像を診断するのと同様に、画像処理と特徴抽出の条件を適切かつ複数組み合わせることにより、1つの画像処理条件では強調不可能な大腸粘膜の異なる表面性状を同時に特徴量として抽出することができ、複雑な表面状態の重症度を分類することが可能となった。協力研究者から提供された実際の大腸内視鏡画像データを用いた検証実験の結果、提案した手法による潰瘍性大腸炎の炎症度を分類可能な画像処理条件と特徴抽出条件の最適化を確認し、その有効性を検証することができた。 また、本手法の高速化研究として、昨年度購入したGPU計算機による評価実験を行い、提案手法の並列検証プログラムを用いた検証実験により、最適化時間を約13倍向上させることに成功した。この結果、提案手法はGPU計算機により効果的に高速化することが可能であることを実証した。 なお、この研究成果は、情報処理学会第96回MPS研究会および産総研オープンラボ2013にて報告し、2014年4月に開催される国際会議ISBI2014にて発表する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、大腸内視鏡画像から大腸粘膜の炎症度合の自動分類を実現する画像認識システムの最適化手法の確立を目的としていた。研究の結果、大腸内視鏡画像に含まれる大腸粘膜表面の血管パターンや凹凸具合を強調する画像処理条件と、その強調された画像から幾何学的特徴量を抽出するHLAC特徴の抽出条件を同時に最適化する最適化手法を提案した。この研究成果は、本研究の目標である炎症重症度を自動分類する客観的な評価手法の実現に向けた要素技術のひとつとなる。また、検証実験の詳細な分析の結果、色空間や特徴抽出のパラメータを数種類組み合わせることによる精度向上も実証され、昨年度得られた色空間変換と重症度分類の関係性に関する知見を証明することができた。 昨年度、予備検討を行っていた高速化研究に関しても、購入したGPU計算機を用いた評価実験により高速化の効果を実証することができ、予備検討内容の有効性を確認するとともに、実用的な処理時間を目指した医療画像認識システムの高速化にむけた研究開発に着手した。 さらに、昨年度に引き続き、協力研究者である内視鏡医の先生方との連携も計画通り行うことができ、内視鏡画像データの蓄積や研究成果のレビューによる医学的観点からのフィードバックを行うことができ、実施計画内での目標達成に向けた研究を順調に進めることができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、1・2年目の研究成果をベースに、色空間等の複数の画像処理条件を組み合わせる画像処理最適化技術の構築と、多変量解析により重症度に適合した評価軸を組み込んだシステムの実現に向けた研究開発を行い、入力した大腸内視鏡画像から自動的に炎症の重症度を算出する客観的な評価手法の完成を目指す。 あらかじめ協力研究者の内視鏡医の先生方に診断していただいた炎症の重症度ごとに抽出した特徴のラベル付けを行い、部分空間法をベースとした多変量解析手法を用いて、抽出した特徴から重症度に適合した評価軸へと導く変換システムを完成させる。また、新たな大腸内視鏡画像データも追加し、検証実験と協力研究者によるレビューを繰り返し行い、本技術の精度向上を図る。 また、高速化研究においても、引き続き最適化処理や画像処理の並列計算による高速化に取り組み、GPU計算機を有効に活用して、画像入力から評価結果の提示までの処理時間のさらなる高速化を図り、診断支援技術として実用的な時間での実現を目指していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究成果を発表するために投稿した国際会議(ISBI2014)が2014年4月だったため、当該旅費および参加費を次年度に支出するために次年度使用とした。 また、評価用のノートPCの購入を予定していたが、必要スペックのノートPCの在庫がなかったため、次年度に購入する事としたために次年度使用とした。 次年度は、まず今年度の成果発表として国際会議ISBI2014での発表に際する旅費と参加費を予定している。また、今年度購入予定であった画像認識結果評価用のノートPCを購入し、本研究の有効性の検証に用いたい。さらに、最終年度として、これまでの研究成果を発表するための国内外の会議への旅費および参加費、継続して収集している大腸内視鏡データ保存用の記録媒体への使用を予定している。
|
Research Products
(6 results)