2012 Fiscal Year Research-status Report
人間の手による非把持型の滑りを伴う器用な操作の解析
Project/Area Number |
24700202
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
佐々木 智典 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第一部機械技術グループ, 研究員 (30587126)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 手 / ディジタルヒューマンモデル / ディジタルハンド / モデリング / 画像計測 |
Research Abstract |
本研究の目的は,人間が手によって物体を把持をせずに滑らせながら行う器用な操作について,操作対象物体と手との接触面の曲面を考慮した力学的解析を行い,このような器用な操作を行うための力学的条件を明らかにすることである。平成24年度においては,(1)画像計測と接触因子の抽出,(2)動力学シミュレーション空間における剛体ディジタルハンドと柔軟体ディジタルハンドの開発,(3)設計パラメータの調整指針策定,(4)器用な操作における剛体間の接触の力学的条件の検討に取り組んだ。 (1)の画像計測は,実物の手の皮膚の変形の観測を目指すものであり,物体の変形を計測する手法であるディジタル画像相関法に注目し,本研究の目的に合わせたカスタマイズを含めたソフトウェアの作成と,高速度カメラとの組み合わせよる画像計測に取り組んだ。 (2)の剛体ディジタルハンドと柔軟体ディジタルハンドの開発については,申請時点までに開発に取り組んでいた剛体ディジタルハンドの更なる改善および,剛体ディジタルハンドの表面に柔軟体を配置することによる柔軟体ディジタルハンドの構築に取り組んだ。 (3)の設計パラメータの調整指針の策定は,上記開発中の剛体ディジタルハンドおよび柔軟体ディジタルハンドについて力学上のパラメータおよびシミュレーション上のパラメータ等を実物の手の皮膚の変形等を考慮して調整することを試みるものである。これについては,画像計測により得られている手の皮膚の変形の程度を参考にしつつ,設計パラメータの調整につき検討した。 (4)の剛体間の接触の力学的条件の検討については,開発中のディジタルハンドにより物体の操作を行うときの接触力の可視化等から実物の手による操作における力学的条件につき検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下のように,平成24年度中の研究の達成度については概ね当初計画に沿って進捗しているものと考える。 上記【研究実績の概要】に示した(1)手の皮膚の変形の観測については平成24年度中にディジタル画像相関法を利用するソフトウェア開発を行っており,処理速度等の性能上,不十分な点はあるものの,皮膚の変形の観測は行えるようになっており,これは当初計画に概ね沿って研究の進展が得られたものと考える。 (2)の剛体ディジタルハンドと柔軟体ディジタルハンドの開発については,より解剖学的に妥当な構造の剛体・柔軟体ハンドを実現するための開発の余地はあるものの,剛体のみでのハンド構築および手袋型の入力装置(データグローブ)との連動を実現できている。また,柔軟体ディジタルハンドについては剛体ディジタルハンドの表面に柔軟体を配置する構造による構築に取り組んでいる。これらも概ね当初計画に沿ったものといえる。 (3)の設計パラメータの調整指針の策定については,上記の画像計測によって高速度カメラによる撮影映像等から手の皮膚の変形の程度が観測できるようになっており,更にデータを収集する。 (4)の剛体間の接触の力学的条件の検討については,研究の進捗が当初計画よりもやや遅れているものの,上記(1)~(3)により得られるデータを参照しつつ,更に検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの達成度】の欄に示したように,当初計画に対して研究はおおむね順調に進展しているが,上記【研究実績の概要】に示した(1)~(4)の内容について更に精錬化を図り,当初計画に示している剛体・柔軟体間および柔軟体・柔軟体間の接触の解析に取り組む。 手の皮膚の変形の観測については,現状の画像処理ソフトウェアの処理速度を向上させ,高速度カメラにより撮影した物体を操作する手の動画像の処理を行う。画像処理ソフトウェアの処理速度の向上については並列処理の利用を試行中であり,これにより更に多くのデータを収集することを図る。 剛体ディジタルハンドと柔軟体ディジタルハンドの開発については既存の3次元人体データ等を利用し,より解剖学的に妥当な構造のディジタルハンドの構築に取り組む。また,柔軟体ディジタルハンドについて,上記の実際の手の皮膚の変形の観測から柔軟体ディジタルハンドのパラメータ調整を行い,より実際の手の柔軟性を考慮した動力学シミュレーションを実現することを図る。 上記の高速度カメラ映像による手の皮膚の変形の観測およびこれに基づく柔軟体ディジタルハンドの開発を進めることにより,手と操作対象の物体の接触についてデータを収集し,接触における器用な操作を行うための力学的な条件について更に検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度中の研究費使用額が当初計画よりも少なくなり,平成25年度使用分の研究費が生じた事由は次のとおりである。 画像処理に利用する並列計算用ユニット(GPU)について,当初50万円以上の価格の製品の購入を検討していたが,それよりも廉価な製品(計画時点以降に発売されたもの)である程度の性能が得られるものとみられたため,こちらを購入した。また,当初計画において国際会議における発表を検討していたが,投稿・査読を経て採択まで至らなかったため,この旅費分の研究費も使用していない。 平成25年度研究費の使用計画は以下のように検討している。手の皮膚の変形のための画像計測につき,高速度カメラにより取得した動画データの処理を行う必要があり,その量が多くなることが予想されるため,動画データ処理を実施するためのワークステーション相当以上の計算機の購入を検討している。 上記に関連して,ソフトウェア,データ記録用の装置,メディア,手のマーキングのための塗料等,実験実施・データ処理等のための消耗品購入も検討する。 また,投稿中あるいは投稿予定の学会国内・国際会議が複数あり,このための旅費支出を計画している。
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Research Products
(1 results)