2013 Fiscal Year Research-status Report
耳鳴再訓練療法のための骨伝導聴覚刺激システムの開発
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24700208
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
為末 隆弘 山口大学, 大学情報機構, 准教授 (00390451)
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Keywords | 感性情報学 / 聴覚 / 耳鳴再訓練療法 / 音響刺激 |
Research Abstract |
慢性的な耳鳴に対する脳の順応を獲得する耳鳴再訓練療法(Tinnitus Retraining Therapy)が注目されている。本研究は、耳鳴を意識するに値しない音に変化させるためには、耳鳴に重畳する音として、どのような物理的音響特性をもつ聴覚刺激を用いればよいか、また、その提示時間や提示方法について考察し、患者に負担の少ない聴覚刺激提示システムを構築しようとするものである。 今年度は音を「聞き流そうとしている」生体反応に関連した脳波中の特徴量の抽出を目指して、大脳と聴覚に関する従来の研究事例や文献を分析し、自律的・背景的な電位変動である脳波のα波成分や前頭正中部θ波(Fmθ)成分、N1、P1、N2、P2、P3a、P3b、SVR などの中潜時・長潜時の聴覚誘発電位および事象関連電位について検討した。特に、選択的注意との密接な関与が示唆されており、精神的負荷に関わる指標として用いらるN1、P3a、P3bなどの成分に着目し、耳鳴を模擬した音響刺激による事象関連電位の導出を試みた。 気導または骨導による聴覚刺激を用いて事象関連電位を導出できることを確認した。導出電極として、眼電図の影響が少なく、かつ大きな振幅値が得られる正中頭頂部Pzが優位となった。耳鳴模擬音に重畳する音響刺激の種類によってN1やP3成分の振幅に有意差が認められ、これらと刺激に対する選択的注意・集中との関連性の一端が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目的は、「耳鳴再訓練療法のための音響刺激に対す心理・生理的評価方法の検討」であったが、主観申告に基づく心理評価法のみでは測定することが難しい“聞き流している”、“意識していない”といった生体反応に関連した脳波中の特徴量の候補を洗い出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
「耳鳴再訓練療法のための音響刺激モデル」 (1) 前年度までの結果を踏まえて、音響刺激の具備すべき物理的特性を洗い出す。 (2) 一般的な音響物理指標である信号対雑音比(SN比)や信号対妨害雑音比(SI)などとの関連性について検討する。 (3) 音響刺激が具備すべき物理的音響特性を加味した音響刺激モデルをいくつか設定する。 (4) 気導式・骨伝導式の聴覚刺激を用いた音響刺激提示システムの構築を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際会議発表について、次年度開催される予定の国際会議への発表に変更したため 次年度の国際会議発表のための旅費、参加費、英文校正費として使用する。
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