2012 Fiscal Year Research-status Report
格子確率モデルを用いた生息地破壊・復元におけるヒステリシスの研究
Project/Area Number |
24700228
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
中桐 斉之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (30378244)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 格子確率モデル / 生息地破壊 / 生息地分断化 / 履歴効果 |
Research Abstract |
平成24年度に実施した研究の成果について、 これまで申請者は、様々な生物の個体群動態を空間分布の特性に注目し、環境破壊の問題とくに生息地破壊に注目し、生息地の破壊・分断化による生物の絶滅について、格子モデルによって解析を行ってきた。開発などの人間活動によって起こる生息地破壊は、地球環境の保全にとって重要な課題である。また、残った生息地を保全することに加え、生息地の復元と生態系を構成する生物種の回復がより重要な課題となってくる。ところが、環境を復元しても、しばしば目的の生物種の回復には至らないことがある。これは、破壊プロセスと復元プロセスが異なる履歴効果が存在することを示唆している。生物保全における生息地の破壊・復元プロセスで履歴効果が存在するかという問題は、環境復元という観点からも最重要な課題である。 そこで、申請者は、空間の効果を容易に扱える有用点を考慮し、格子確率モデルを用いて、生息地の破壊・復元過程のモデル構築と解析を行った。具体的には間接効果の見られたモデル (Nakagiri et al.,2010)を発展させ、生息地破壊がダイナミックに変化するモデルを構築し、破壊モデルには以前の結果から分断化の重要性が指摘されている為、連続破壊・2層サイト破壊・ボンド破壊の3つの手法を用いてモデルを構築した。本研究では、格子を生物層と生息地層の2層に分け生息地層に生息地と破壊地を置くことで生息地破壊を実現する2層サイト破壊モデルを導入した点が新しい点である。ボンド破壊では生息地の繋がりの破壊、2層サイト破壊では生息地の繋がりと面積変化の両方の影響を、連続サイト破壊モデルでは、面積変化の影響を解析できる。これによって、生息地面積と生息地分断化の影響を解析できるモデルを構築した。また、このモデルを用いて、生息地破壊プロセスにおけるシミュレーション実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、生息地破壊において、その間接効果の見られたモデル (Nakagiri et al.,2010)を発展させ、生息地破壊プロセスについて、格子確率モデルによるモデル構築を行った。破壊モデルには以前の結果から分断化の重要性が指摘されている為、比較して解析するため、次の3つの手法を採用した。「ランダムサイト破壊」「2層サイト破壊」「ボンド破壊」である。申請者は、以上のこれら3つの手法のモデルを構築し、シミュレーションによる比較を行い始めることができた。現在、生息地分断化の変化過程が、生物にどのような影響を及ぼしているのか、シミュレーションによって解析しており、今後行う、ダイナミックな変化モデルをふくめて、平成24年度の予定を概ね順調に進展させている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成24年度で構築したモデルを元に、計算機上で生態系を具体的にシミュレートする方向で研究を進める。生息地としては2次元の格子を用い、その格子上で生物の生活史をシミュレートする。ここで、格子の破壊率を増加させることで生息地破壊、減少させることで生息地の復元を実現する。また、これらを動的に変化させることで、生息地のダイナミックな変化を実現し、生息地の破壊・復元動態をシミュレーションによって解析し、ヒステリシスが起こるのかを解析していく。 また、これによって、生息地の破壊・復元過程が、それぞれ生物の個体群動態や絶滅にどのような影響を及ぼすのかを、生息地分断化・面積減少と間接効果という観点から解析する。実際の生態系に即したモデルは非常に複雑であるため、計算に時間が必要なだけでなく、何が影響を及ぼしているのかを解析するのが難しい。そこで、シンプルではあるが解析がしやすいモデルからシミュレーションと平均場近似等の数理解析を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、上記のシミュレーションに計算機を使用する。新たにワークステーションを導入すると共に既存の計算機については、性能のグレードアップを行う予定であり、これに研究費を使用する予定である。なお、本年度はモデル構築が主だったため、コンピュータのアップグレードを次年度に回した都合上、未使用額が生じている。そこで、25年度に未使用額を含めアップグレードを行う予定である。また、計算機実験には、複雑な手順が必要だったり、非常に長い時間がかったりなどするため、効率よくシミュレーションを実行するために研究補助員として、研究協力者を2名程度予定しており、これにも研究費の使用を予定している。 また、本年度では、関係するモデルの研究者との打ち合わせや、学会等での研究成果の発表を予定しており、旅費に研究費を使用する予定である。
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