2013 Fiscal Year Research-status Report
格子確率モデルを用いた生息地破壊・復元におけるヒステリシスの研究
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24700228
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
中桐 斉之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (30378244)
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Keywords | 格子確率モデル / 生息地分断化 / 生息地破壊 |
Research Abstract |
これまで、申請者は、様々な生物の個体群動態に対して、空間の影響に着目して、とくに環境破壊その中でも生息地破壊に焦点を当てて研究を行ってきた。生息地破壊は、昨今開発などの人間活動による破壊が重要な問題となってきていることから、非常に重要なトピックである。また、生息地破壊においては破壊の過程がどうなるかと言うことも重要であるが、生息地の復元も重要なトピックとなってきており、これらを解析することは、環境問題という観点からも重要な課題である。 そこで、申請者は、空間の効果を容易に扱える有用点を考慮し、生息地破壊による生物の絶滅などの研究を格子確率モデルを用いた計算機シミュレーションによる解析を行ってきた。具体的には、間接効果の見られたモデル(Nakagiri et al. 2001)を発展させ、生息地破壊が起こるモデルとして、破壊モデルには以前の結果から分断化の重要性が指摘されているため、クラスター破壊、2層ランダムサイト破壊、ボンド破壊の3つの手法を用いた。本研究では、格子を生物層と生息地層の2層に分け、生息地層に生息地と破壊地を置くことで、生息地の破壊を実現する2層ランダムサイト破壊モデルを導入している。ボンド破壊では生息地の繋がり破壊のみを、2層ランダムサイト破壊では、生息地の繋がりと面積変化の相乗効果の影響を、連続サイト破壊モデルでは、面積変化の影響を解析できる。これにより、生息地面積と分断化の生息地破壊プロセスのモデルを構築し、シミュレーション実験によって解析を行った。さらに、生物が移動するモデルを構築し、生物の移動と生息地破壊の関係の解析を、シミュレーション実験により行った。また、生息地破壊の解析のため、寒天培地上に枯草菌、納豆菌を接種し培養する実験を行い、培地上を破壊することで、生息地破壊の実証実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、生息地破壊において、生息地破壊プロセスについて、構築した生息地破壊の格子確率モデルを用いてシミュレーション実験を行った。これにより、破壊モデルにおける分断化の影響について解析を行っている。クラスター破壊、2層ランダムサイト破壊、ボンド破壊の3つのモデルによるシミュレーション実験による解析からは、生息地分断化の影響が明らかになり、分断化が絶滅に重要なキーとなっていることがわかった。 さらに、従来取り扱われてこなかった、生物の移動の効果についてもモデルを構築し、解析を始めている。また、生息地破壊に関しては、バクテリアにおける培地の破壊実験を開始しており、実験に実証も行いはじめており、シミュレーションによる結果を実験の側面からも解析することが可能となる見通しが立った。現在、生息地分断化の変化過程が生物にどのような影響を及ぼしているのかを確認ができたため、ダイナミックな変化モデルの構築や生物の移動の効果など、様々な方向のモデルや、実証実験との対応が考えられている。以上のように、平成25年度の予定をおおむね順調に進展させている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成25年度で構築したモデルをもとに、復元モデルもしくはダイナミックな変化モデルの構築や生物の移動の効果など、様々な方向でモデル構築を行い、生息地破壊の影響で重要となっているキーを解析していく予定である。さらに、従来取り扱われてこなかった、生物の移動の効果についても解析を開始しており、これを実現するためのモデル構築とシミュレーション実験を行う予定である。また、生息地破壊に関しては、バクテリアにおける培地の破壊実験を開始し、実証実験も行いはじめており、シミュレーションによる結果を実験の側面からも解析することで、解析結果と実際の生物との対応を考えていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた研究補助の人件費が研究の日程の都合で次年度にずれ込んだため 本研究では、シミュレーションに計算機を使用する。既存の計算機について、さらに性能のグレードアップを行う予定であり、これに研究費を使用する予定である。なお、そこで、26年度には、本年度予算の未使用額を含めた、さらなるグレードアップを行う予定である。また、計算機実験には、複雑な手順が必要だったり、非常に長い時間がかったりなどするため、効率よくシミュレーションを実行するための研究補助員として、研究協力者を2名程度予定しているが、本年度にこの一部がずれ込んだため、これにも研究費の使用を予定している。また、本年度では、関係するモデルの研究者との打ち合わせや、学会等での研究成果の発表を予定しており、これらの旅費にも研究費を使用する予定である。また、最終年度の成果発表の論文作成や印刷やそれに関わる経費にも研究費を使用する予定である。
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