2012 Fiscal Year Research-status Report
モデル生物が示すゆらぎの実用的効果と最適解探索手法への応用
Project/Area Number |
24700229
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
清水 邦康 千葉工業大学, 工学部, 助教 (10409451)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ゆらぎ / 最適ネットワーク / 真正粘菌 |
Research Abstract |
本年度は, ネットワーク最適化能力を有するモデル生物の計算モデルにおいて, 台形波外力を印加した場合の解探索過程に現れる影響を数値的に調査した. 本研究の最終目的はゆらぎを持つ外力印加時の影響を調べることにあるが, 周期的な外力信号への応答を詳しく調べることで, 外力の非周期性の影響をより明らかにすることを狙いとした. 対象としたネットワークは, 5×5個の節点が隣接結合された2次元格子ネットワークとし, 競合経路が多数発生する状況を作り出すような範囲で指定した一様乱数を経路の重み情報として与えた. これは正弦波を印加した場合を調査した先行研究と同じ設定とすることで, 外力の種類の変化による比較を可能とさせ, また外力の振幅値がなめらかに変化する場合と非連続的に変化する場合に, 解探索過程に現れる影響を明らかにするためである. 最初に, どの程度の外力強度が有効であるか調べるために直流バイアスの振幅値変化に対する計算モデルの解探索に要する時間を調査した. その結果, 振幅の絶対値が大きすぎると最適経路を探索することが不可能となることを確認し, 微小な振幅値が適当であるとの知見を得た. この結果を元に, 微小な振幅値を持つ台形波を計算モデルに印加し, 正負振幅一定時間およびそのデューティ比を変化させた場合に最適解探索時間が短縮される結果を得た. さらに, 対象としたネットワーク設定の経路重み情報を変化させた場合においても定性的に同様な結果を得ることができた. これより, 解の探索過程の初期状態直後に微小な台形波外力を印加し, 解探索過程が求められた段階でその注入を停止することで, 従来手法と比較して早い探索時間が期待できるという成果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は大別して次の2点である:(1)ゆらぎを内包する振動データを計算モデルに対して印加した場合の効果を明らかにすること. (2)時空的な変化に特徴を持つ振動パターンを見付け, その役割を対象システムの応答を調査することで振動パターンの役割を明らかにすること. 本年度は(1)に関連して, 周期的にその振幅値一定の状態が正負に変化する台形波を印加した場合の計算モデルに現れる影響を調査しその成果を外部発表した. 外力を印加した場合にはその振幅一定値が負の状態の時に, システムが解に収束する状態に向かう. 一方, 振幅値が正の状態では, この状態がリセットされる. そして, この過程が繰り返されることにより, 微小な振幅値を印加すれば最終的に最適な経路のみに収束するようになり, その後は解の移り変わりが見られなくなる. この結果より, 時間に関して周期的で, かつ振幅に変動がない外力であってもこのような外力の有意性を示すことが分かるが, ゆらぎを内包している振動データを印加した場合には, さらに柔軟に解の探索過程が移り変わる状況があることが現在までに取得したいくつかのサンプルデータより明らかになりつつある. 生きた粘菌の振動データ取得に関して, 光ファイバーを使用して粘菌の特定部位のみに光を照射するシステム開発がまだ未完了となっているため, 今後はこの課題に早急に取組むこととする. また, 粘菌の振動データを計算モデルへ導入するためのシステム, すなわち, 取得データに対して振幅を自由に正規化して調整するプログラムを本年度に作成した. また, シミュレーション時間と計測システムでの画像フレーム取得時間のミスマッチへの対処は, 上述の台形波外力の印加結果を参考に計算モデルへ適用できることが分かった.
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Strategy for Future Research Activity |
粘菌の振動データを印加した場合のシステムの応答を以下のように調査し, 最適解探索過程へのゆらぎの影響を明らかにする. また, 関連する計測システムの開発を行う. (ゆらぎの影響) 生きた粘菌が示す振動データを計算モデルに印加した場合の効果を明らかにする. 解探索に要する時間、また求められた解が最適な解であるのか, あるいは競合する解に収束しているのかを調べる. また, 本年度の周期外力の結果と対比させ, ゆらぎを含む外乱を印加した場合の特徴がより明確になると考えている. (振動パターンの役割) 粘菌はその時の状態および環境などに依存して異なる振動パターンを示す. 前年度に取得する多様な振動データを印加した場合のシステム応答を確認し, その作用の特徴により分類する. 特に, 印加する振動データのスペクトル成分の分布に着目することで得られた結果を分類する指針を得たい. また, 実際の粘菌は一見, 安定状態のように思われる振動モードを, 時間の経過につれて別の振動モードへと自発的にスイッチし, これが連続するような, いわゆる準安定な振動モード間の遷移現象を示すことが分かっている. このような状態の振動パターンを印加し, その効果を明らかにする. (時空間的に変化するゆらぎの効果)粘菌の原形質流動は, 体のある部分と別の部分では管ネットワークによる相互作用に伴い, 位相ずれや異なる種類の振動現象が観測される. たとえば, 心臓での心筋活動には局所的にエネルギーを持つ振動が空間的に伝搬するいわゆる波動現象などが中心的な役割を果たすことなどが知られている.このような観点から時空間的に変化する振動パターンを見つけ出し, 計算モデルに印加したときのシステムへの作用を確認する. (光照射システムの開発)光ファイバーを使用して粘菌の特定部位のみに光を照射するシステム開発を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
○ 光照射するシステム開発用部品(光ファイバー, 光ファイバーカッター, 基盤電源, 絶縁スペーサー, 各種の電子回路素子, コールドライト用交換ランプ等) ○ 計測データ保管用 Thuderbolt対応大容量高速外部ハードディスク ○ 粘菌培養に必要とする物品(餌, Agar寒天, シリカゲル, シャーレ, 純水製造装置用定期交換部品, 恒温恒湿槽保守点検費用 等) ○ 外部発表に要する経費(研究旅費・交通費, 英文校閲料, 論文掲載料, レーザープリンタ用トナーカートリッジ 等)
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