2013 Fiscal Year Research-status Report
モデル生物が示すゆらぎの実用的効果と最適解探索手法への応用
Project/Area Number |
24700229
|
Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
清水 邦康 千葉工業大学, 工学部, 助教 (10409451)
|
Keywords | 結合振動子 / 時系列解析 / リカレンスプロット |
Research Abstract |
本年度は, 対象とするモデル生物の実際の振動データを取得した場合に, その振動パターンの解析を目的として研究を行った. 研究概要ならびにその成果を以下に示す. 実験対象とする真性粘菌を小さな円領域が細い経路で格子状に結ばれた構造をパターン化した材料内に設置した場合に, 各円領域を振動子として見なして, 結合振動子系を構築して実験を行った. 本研究では, 環境適応的な行動を示すこの生物の動きを制御すると考えられる体の厚み振動には, 確率的なダイナミクスではなくある種の非線形ダイナミクスが関与していると仮定し, 実験で得られた振動データに非線形時系列解析手法を適用して, そのダイナミクスを推測することを試みた. 実験で得られた振動データの特徴を視覚化するために, リカレンスプロットを描いてその特性を評価した. この特性図より, 得られた振動データはプロットの様相が一様であることから, 振動データの定常性が確保されていることを確認した. さらに, 2次元平面図の左下から右上を結ぶ傾き45度の線に平行な線分は決定論的な系に現れやすいことが知られるが, 実験データにおいても多くみられることが分かった. 次に, リカレンスプロットに関連して計算される相関積分値を求め, それらが非線形ダイナミクスを示唆し得る結果となった. 一方で, 実際の生物を対象とすることから実験データ数は限られており, これらの結果を別の観点から検証する課題も確認することができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である刺激応答を印加した場合に生物が示す振動パターンの特徴量の実証は未達成であるものの, 実振動データへの非線形時系列解析手法の適用を進めることができた. 当初予定では実データの解析にはスペクトル成分の分布にのみ着目する予定であったが, 実験データの別観点からの検証可能性を示唆することができた. また, このような解析の際には, 雑音除去およびデータ点数の制約などの課題が明確となり, 刺激応答を検証する際の重要な知見を得ることができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
刺激印加に対する適応的行動と振動パターンの関係性を検証するためには, 光刺激システムの調整が必要であり, 早急な実現を目指す. 得られた振動データの解析方法として, 当初予定のスペクトル成分のみならず, 平成25年度に導入した非線形時系列データを示唆する特徴量を計算することで, 真性粘菌の体の厚み振動のパターンの適応的行動に果たす役割に関する新たな知見を得たい. また, 計算モデルにこのような振動データを印加した場合の最適解探索過程への影響を検証していく.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では刺激応答を印加した場合のモデル生物が示す振動パターンの特徴量を見つけ出すことを目的の一つとして取り組んでいる. このテーマで使用する光照射システムに関して, 当初の予定のものより高精度のものが必要になった都合上, 自作予定であった装置から別光源システムへと変更・調整する必要性が生じ, 当初の使用予定額からの差異が生じた. 生物の通常の培養に要する費用, ならびに論文誌への投稿のための出版費用として使用予定である.
|
Research Products
(4 results)