2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24700255
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中村 哲之 千葉大学, 先進科学センター, 特任助教 (10623465)
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Keywords | 比較認知 / 運動情報処理 / 視覚探索 / ハト / 知覚的体制化 / 拡大・縮小運動 |
Research Abstract |
「運動による事物の認識」「観察者に対する事物の接近・離反の認識」の2つの観点から,ハトとヒトを比較するための視覚探索課題を用いた実験を行うことにより,運動情報の知覚が環境認識にどのように影響するのか,その生態学的意義について検討することが本研究の目的であった。 最終年度は,「観察者に対する事物の接近・離反の認識」に関して,さらに詳細に検討した。ハトでもヒトでも,縮小する妨害刺激のなかから拡大する標的刺激を探索するほうがその逆の探索をおこなうよりも容易であることが示唆されてきたが,これらの実験では,同一課題内における拡大探索と縮小探索の個体内比較が実現されていなかった。形状の異なる2種類の刺激のうち,一方を標的,もう一方を妨害刺激とする方法を考案することで,先の問題点を解消した。実験の結果,ハトでもヒトでも標的刺激が拡大運動する条件の方が縮小運動する条件に比べて探索が容易であった。ヒトで得られた内観報告では,すべての被験者は拡大運動・縮小運動の違いに気づいていなかった。少なくともヒトにおいて,運動方向の同定が起きる視覚処理以前の過程で,拡大・縮小運動の感受性に差が生じていたことが示唆された。ヒトもハトも縮小運動より拡大運動に感受性が高いことが明らかになった。 さらに研究成果の取りまとめをおこなった。「運動による事物の認識」に関する実験からは,運動情報の知覚的体制化に関してハトとヒトで顕著な種差を確認した。一方で,「観察者に対する事物の接近・離反の認識」に関する実験からは,両種で類似した現象が生じていることを確認した。運動情報の種類によって,種間観類性と種間相違を示した本研究は,運動情報の認識がそれぞれの動物の生態に適した形に進化してきたことを示すものであることを示している。
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