2013 Fiscal Year Research-status Report
人工触感生成実験とコーパス分析によるオノマトペを介した質感共有の研究
Project/Area Number |
24700257
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
宇野 良子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40396833)
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Keywords | オノマトペ / 人工触感生成装置 / ウェブコーパス / 質感認知 / エージェンシー / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
本研究は、人工触感生成装置を用いた実験と、大型ウェブコーパスの分析を通して、言葉を介した質感認知の共有の仕組と効果を明らかにする理論構築を目指している。特に、質感認知に自己と他者のエージェンシーがどのように関わるのかに着目している。 今年度は人工触感生成装置に関しては、昨年開発したアプリケーション(EVONO.auto)に必要な修正を加えた。そして、様々な物理的特性(粘土・弾性・質量)や時間遅れの条件に対し、オノマトペを対応付けるという実験を行った。その結果は音象徴ワークショップ(12月)で発表した。 次にウェブコーパスの分析に関しては、触感のオノマトペの動詞化についてウェブデータを用いて分析し、オノマトペを通じたエージェンシー認知の解明に関わる結果を得た。この結果をまとめ国際認知言語学会(6月)や社会的発生学研究会(7月)で発表した。 最後に、質感認知の理論構築についてだが、まず、エージェンシー認知という観点から触感のオノマトペを扱うのとパラレルな方法で感情のオノマトペを扱う可能性について国際類像性シンポジウム(5月)で発表した。さらに質感認知としてのエージェンシー認知という観点から包括的な言語理論をつくることを目指しており、ここまでの成果を人工知能学会(6月)、ヨーロッパ人工知能学会(9月)で発表した。 以上のプロジェクト全体の進捗については、著書でも一部言及した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、認知実験・コーパス分析・理論構築の三つの部分からなる。進捗が予定より早い部分と遅い部分があるが、全体的にみる と、おおむね順調に進展している。 まず、認知実験に関しては、予定より時間がかかっている。これは、初年度人工触感生成装置として用いるアプリケーション(EVONO.auto)の開発にあたり、元となった既存のアプリケーション(EVONO)の表現力が予想以上に限られていることが予備実験によって分かったため、改良でカバーするだけでは不十分であり、同時に実験方法を部分的に変更する必要がでたからである。昨年度中に問題点をクリアし、データをとりはじめている。今年度は再度の改良により新しいデータを得ることもできた。 コーパス分析に関しては、予定通り実験で用いるオノマトペをウェブデータから判定する作業を行った。加えて、オノマトペの動詞化についてのデータを分析する中で予定より早く成果を出した。引き続きオノマトペのウェブデータと実験データの連結を目指して作業中である。 理論構築に関しても予定より順調である。研究協力者の鈴木氏が研究している「内因性」に着目することで、触感のオノマトペと感情のオノマトペを質感共有とエージェンシーという観点からパラレルに論じられる可能性を見出し研究発表なども行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、人工触感生成の認知実験に関しては、2012年度に開発したアプリケーションによる実験でデータを収集し、質感認知と物理的特性とのマッピングを導く作業を続ける。2013年度は時間のずれが質感認知とそれを表現するオノマトペにどう影響するかに着目して実験してきたので、2014年度は空間のずれに着目した実験をする予定である。 また、ウェブデータについては、2012年度にサーチしたデータを実験で用いるにあたって、2013年度に、適切な可視化の方法を検討したので、それを2014年度に実装する。更に、オノマトペの動詞化については論文を完成させる。 更に、触感のオノマトペの分析から言語起源の理論にどのような貢献ができるかという点について、研究がすすんだため、実験結果と共に発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
理由を記入する欄 初年度のアプリケーション開発の遅れにより、実験が予定より全体に遅れており、その分の費用が余っている。 理由を記入する欄 二年目に行われるはずだった実験の一部を三年目に行う。そのための準備は整っている。
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