2013 Fiscal Year Research-status Report
ノスタルジア感情と単純接触効果に及ぼす刺激集中呈示による長期的学習の影響
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24700263
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松田 憲 山口大学, 理工学研究科, 講師 (10422916)
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Keywords | 単純接触効果 / 長期的接触 / 集中呈示 / ノスタルジア / インターバル |
Research Abstract |
単純接触効果へのノスタルジア感情の介在を想定し,刺激の呈示傾向と呈示方法の操作が長期的学習における単純接触効果にどのような影響を及ぼすのかを検討した。 前年度に行った実験1の不備を修正した再実験と,広告刺激を用いた実験2を行った。 実験1では長期的接触(2週間前,1週間前,5分前)を設定し,刺激の呈示傾向と刺激の呈示方法を操作した。呈示傾向は減少(12-9-6回),一定(9-9-9回),増加(6-9-12回)の3水準を設定した。また,刺激の呈示方法として分散呈示と集中呈示,部分集中呈示の3水準を設定した。無意味輪郭刺激の総呈示回数および各接触フェーズでの呈示回数は27回に設定した。接触から評定までのインターバルは5分と1週間の2水準であった。評定項目は,好意度,懐かしさ,安心感,親近性,新奇性,不快感の7段階評定であった。5分後評定では分散呈示と部分集中呈示のすべての呈示傾向条件で単純接触効果が得られ,1週間後評定では呈示方法と呈示傾向に関わらず,接触フェーズで呈示した図形全てに対して単純接触効果の生起が確認された。分散・部分集中呈示条件は集中呈示と比較してより単純接触効果が得られた一方で,集中呈示は1週間のインターバルによって効果が増加したことが示された。しかし,インターバルによるノスタルジアの喚起は確認されず,分散呈示による効果を上回るものではなかった。1週間おきの定期的接触が,1週間のインターバルによるノスタルジア喚起を阻害したと考える。 続いて,呈示刺激としてバナー広告を用いた実験2を行った。独立変数として,呈示回数 (3回,6回,9回),呈示方法(集中,分散),インターバル(5分,1週間)を操作した。実験の結果,無意味輪郭図形を用いた松田ほか(2012)と同様に,集中呈示されたバナー広告は,1週間のインターバルによってノスタルジアを喚起し,好意度が上昇する結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は刺激の集中呈示ないし分散呈示後に長期的な遅延条件を設定し,単純接触効果への影響およびそれへのノスタルジア感情の介在について検討するものである。呈示回数条件とインターバル条件を設定することで,集中・分散呈示の各呈示方法において,どの程度遅延をおいたときに何回呈示すれば最大限の単純接触効果が得られるのかを示すことを目的としている。本年度に行った実験1は,前年度に行った実験に刺激のカウンターバランスに不備が見つかったため,不備を修正して再実験を行ったものである。また,前年度はインターバル条件を参加者内で行ったため,接触刺激が非常に多く,参加者の負担が大きかったことが結果を歪めた可能性を考え,参加者間計画に変更した。その結果,前年度には検出することにできなかった,インターバルによる集中呈示刺激への好意度の増加が見られ,仮説に適合した結果を得ることができた。ただし,評定値そのものは分散呈示条件より低く,さらにインターバルによるノスタルジアの上昇が得られなかった。研究成果は2014年の日本心理学会の年次大会で発表予定である。 本年度に新たに行った実験2では,刺激としてバナー広告を用いた。ここでは長期的学習の効果を見る前に,集中呈示と遅延によるノスタルジア喚起がバナー広告刺激においてもみられるかを確認するために,松田ほか(2012)の先行研究と同様に短期的接触課題を用いた。その結果,先行研究と同様に,1週間のインターバルによって,9回の集中呈示を行ったバナー広告へのノスタルジア喚起および単純接触効果の増大が検出された。 このように,実験は順調に進み,次年度への課題もハッキリと示すことができたため,おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験1の再実験において,1週間の遅延による集中呈示された刺激への好意度の上昇を検出することができたが,ノスタルジアの介在を示すことができず,評定値も分散呈示による接触を下回った。実験1では,仮説の基となった先行研究(松田ほか,2012)とは異なる長期的学習を課しており,1週間おきに3回の刺激接触を行った。このような長期にわたる定期的な刺激接触が,1週間のインターバルによるノスタルジアの喚起を阻害したものと考える。Kusumi et al. (2010) によると,ノスタルジアの喚起には長い空白期間が必要である。よって,次年度ではより長期的なインターバル条件を設定して実験を行う。また,実験1では部分集中呈示と分散呈示で高い評定平均値が得られたものの,それらの間に有意な差は見られなかった。従って,理想的な集中の度合いを測定するならば,集中・分散・部分集中呈示の総呈示回数を増やし,接触フェーズ間で接触回数の幅を拡げることでより理想的な集中の度合いを確認することができるのではないかと考える。 実験2では,呈示刺激により具体的な刺激としてバナー広告を用い,無意味輪郭図形を用いた先行研究と同様の手続きで実験を行い,同様の結果を得ることができた。そこで今後はバナー広告の実験に長期的接触パラダイムを導入するとともに,よりノスタルジアが喚起されやすい刺激(たとえば風景など)を用いて結果の一般性を高めていくことが考えられる。 マイクロステップ技術を用いた実験4については,徐々にシステムが使用可能な状況になってきたため,ビッグデータを用いて長期的接触とノスタルジア喚起による単純接触効果の増大の検証につなげていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に実施した実験1のカウンターバランスに不備があり,今年度に取り直した。そのために,学会での成果発表が当初の予定の1年後にずれ込むこととなり,その旅費を次年度使用額としてまわすこととなった。 2014年9月に同志社大学にて開催される日本心理学会の年次大会において,実験1の成果を発表する。その際の交通費と滞在費等に使用する計画である。
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Research Products
(12 results)
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[Presentation] The effects of familiarity and novelty on preference judgments: Manipulation of exposure frequency and background information
Author(s)
Matsuda, K., Kusumi, T., Hosomi, N., Osa, A., & Miike, H.
Organizer
Psychonomic Society
Place of Presentation
Toronto, CAN.
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