2012 Fiscal Year Research-status Report
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24700281
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
清 智也 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (20401242)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 統計数学 / 最適化 |
Research Abstract |
方向統計学で用いられているBingham分布族に対し,その正規化定数が満たす偏微分方程式を導き,ホロノミック勾配法が適用できることを示した.この研究はケント大学のA. Kume氏との共同研究である. ホロノミック勾配法とは,Nakayama et al. (2011) 他により提案された,ホロノミック関数に対する勾配法の総称である.ホロノミック関数とは,それが満たす線形偏微分方程式系の解空間が有限次元であるような関数のことであり,独立変数が任意の曲線上を動くとき関数値が線形常微分方程式に従う,という特徴を持つ.ホロノミック勾配法が有用な場合として,多重積分を含む関数がある.Bingham分布族の正規化定数もそのような関数の一つである. Bingham分布族は,球面あるいは射影空間上の確率分布の中でも基本的な分布の1つであり,方向を表すデータの解析に用いられるほか,shape analysisにおいても有用であることが知られている.Bingham分布族の正規化定数と最尤法の計算については,Kume and Wood (2005) による鞍点近似法がある.本研究では,彼らの手法との数値的な比較を行うとともに,ベキ級数による精度が保証された数値との比較も行った.結果として,データの属す空間が10次元程度までならば,十分実用的な計算時間で精度のよい数値が得られることが分かった. 本研究の特色として,偏微分方程式が退化する場合まで考慮したことが挙げられる.これにより,データがたまたま退化したものであっても,適切に場合分けしてホロノミック勾配法を適用することにより,正しい最尤推定値が得られることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」において,「積分を含む目的関数の最適化問題のうち,現実的な時間で解けるような問題のクラスを広げる」という目標を立てた.これに対し,Bingham分布族の最尤法の計算がホロノミック勾配法で解けることを示した.この意味で,研究は順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究結果に引き続き,ホロノミック勾配法の適用範囲を広げていく.方向統計学や多変量解析においては積分を含んだ関数が多く現れるため,これらを一つ一つ調べていき,ホロノミック性の観点から分類していく.また,ベイズ周辺尤度の計算についても,同手法が適用可能かどうか検討する. 特に,Bingham分布族の最尤推定の場合には退化したケースについてもホロノミック勾配法が適用されることが示されたが,最尤推定以外の推定量については何らかの処理が必要となるので,この点を明らかにしたい.また,既に結果が知られているFisher-Bingham分布族の場合については,現状では最尤推定についても退化したケースを扱うことができないので,この点を共同研究者とともに解決したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
共同研究者との効率的な議論を行うために,海外出張を含む旅費を使用する.また,研究成果の発表および意見交換を行うために研究集会へ参加する.本研究では,高次元のデータに関する数値計算を行う必要があるため,相応の計算機およびソフトウェアを導入する.また発表論文の質を良くするために英文校正を利用する他,プログラミングの補助に対する人件費が必要となる.
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