2012 Fiscal Year Research-status Report
シミュレーションによる混合膜中の膜タンパク質間相互作用機構の解明
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24700299
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮下 尚之 独立行政法人理化学研究所, 分子機能シミュレーション研究チーム, 研究員 (20452162)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ラフト / APP / シミュレーション / 混合膜 / replica-exchange |
Research Abstract |
生体膜は様々な脂質分子が混ざってできている。またラフトと呼ばれる、コレスレロール脂質を多く含むマイクロドメインを生体膜中に作る事が知られており、これが膜タンパク質の機能に強く影響を与えている事がわかってきた。本研究課題の目標は(1)混合膜中のタンパク質に関する研究及び(2)複合(混合)膜中のタンパク質のモデリングプロトコル開発である。 平成24年度は、主に、混合膜、粗視化モデルから段階的に解像度を上げて全原子モデルにするプロトコルを作成し、関連プログラムの作成を実施した。分子間相互作用の詳細を調べる為には、全原子モデルと呼ばれる原子1個が粒子1個に対応する解像度でのシミュレーションを実施する必要がある。しかし、全原子モデル分子動力学(MD)シミュレーションで、たとえ非常に多くの計算資源を使ったとしても複数の脂質分子を混ぜる事は非常に難しい。それは通常のコンピュータクラスタでの全原子モデルMDシミュレーションが脂質分子の拡散の時間スケールにまだ追いついていない為である。またランダムに脂質を配置する方法もあるが、得られた配置がふさわしいか疑問である。そこで粗視化モデルを用いて解決する方法の提案を行った。粗視化モデルからunited atomモデル、全原子モデルへと段階的に変換するプロトコルを作成した。現在、混合膜中のアルツハイマー病の原因タンパク質と脂質分子との相互作用を調べる為のシミュレーションを実施中である。 これまで単一膜中の膜タンパク質のシミュレーション研究が多かったが、今後必要性が増してくるであろう混合膜中での膜タンパク質の研究の為に、このプロトコルは非常に有用となるだろう。今後(25年度中に)、混合膜中の膜タンパク質のシミュレーション研究の論文でこのプロトコル内容も発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の24年度の目標は(1)複合(混合)膜中のタンパク質のモデリングプロトコル開発と、(2)混合膜中のタンパク質のシミュレーション研究の為のチェックとプログラムの修正である。 24年度前半、研究計画の記載どおり、REINへの本課題研究のシミュレーションに必要な修正を実施した。 24年度後半、(1)の混合膜中のタンパク質のモデリングプロトコルを完成させた。現在、混合膜中のアルツハイマー病原因タンパク質と脂質分子との相互作用を調べる為に、(2)のレプリカ交換インターフェースプログラム(REIN)を用いてレプリカ交換分子動力学(REMD)シミュレーションを実施中である。また、他に幾つかの混合膜中の膜タンパク質のシミュレーションの為のモデリングも今回作成したプロトコルを用いて実施している。 24年度前半の進展はとても遅れ心配したが、年度後半に大幅に進展があった。 従って、ほぼ計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度、混合膜中のタンパク質のモデリングプロトコルを完成させた。 25年度はプロダクションの為のシミュレーションと解析、及び論文執筆を行う。25年度前半は、申請者が作成したレプリカ交換インターフェース(REIN)というプログラムを用い、レプリカ交換分子動力学法(REMD)シミュレーションを複数実施する。また、プログラム結果の詳細な解析を実施する。25年度後半は解析及び論文執筆を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は混合膜中のタンパク質のシステムのモデリングの為のプロトコル作成及びテスト計算に必要な計算機サーバを購入し、研究は加速された。昨年度、92,701円の未使用額が生じたが、急遽参加予定の出張をキャンセルした為生じた。本年度は、解析と論文執筆に焦点を当て予算を使用する。(1)タンパク質と脂質間など分子間相互作用の詳細を調査するのに有用な3Dモニターの購入。(24年度まで使用していた3Dモニターが壊れた為購入するが、購入には昨年度の未使用額を使用する。)(2)解析および画像処理の為のデスクトップPCとサーバの購入。(3)解析の為に、前年度購入した計算機サーバに計算を加速させる為のGPGPUボードを購入。(4)論文出版に必要な諸費用。(5)出張費。海外2回、国内10回程度。
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Research Products
(10 results)