2013 Fiscal Year Annual Research Report
全自動実験進化システムによる多剤耐性菌の創出と進化プロセスの解析
Project/Area Number |
24700305
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
鈴木 真吾 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (60379154)
|
Keywords | 薬剤耐性 / 多剤耐性 / 実験進化 / 大腸菌 / 進化プロセス / トレードオフ / 交差耐性 / 超感受性 |
Research Abstract |
複数の異なる系統の抗菌薬に対し耐性(交差耐性)を示す多剤耐性菌の出現および蔓延が大きな社会問題となっている。この多剤耐性菌の出現を効果的に抑制する手法の開発を目指し、その進化プロセスを実験進化的手法にて解析したところ、昨年度の成果として、併用する抗菌薬の組み合わせによって耐性化速度が非常に異なることが判明した。そこで本年度は、抗菌薬併用による耐性化速度変化のメカニズムを解明することとした。 実験進化により創出した各抗菌薬耐性株の他抗菌薬に対する耐性能を解析したところ、様々な耐性菌にて交差耐性が観察されるとともに一部の耐性菌では特定の抗菌薬に対して元株よりも弱くなる超感受性を示すことが観察された。特に顕著な例としては、クロラムフェニコール耐性菌はアミノグリコシド系抗菌薬に対して強い超感受性を示し、アミノグリコシド耐性菌はその逆にクロラムフェニコールに対して超感受性を示した。このようなトレードオフを生じさせるメカミズムを解明するために、ゲノムシーケンス解析、それに続く変異体作製および耐性能解析により、多剤排出ポンプと電子伝達系による細胞内のプロトン濃度の緩衝作用の関与が示唆された。そこで、電子伝達系阻害剤を用いてこの仮説を検証したところ、完全ではないがトレードオフが緩和され両者による細胞内のプロトン濃度の緩衝作用がトレードオフを出現させる一因であることが判明した。つづいて、トレードオフの関係にある抗菌薬を併用することで耐性化を抑制できるのではないかと考え実験進化を行ったところ、トレードオフの関係にある抗菌薬を併用した際には顕著にその耐性化を抑制することが判明した。 これらの結果は、臨床における多剤併用療法への改善に有用な知見となるとともに、未だ不明な点が多い進化のトレードオフに関与する分子メカニズムを同定できたという点で進化生物学の発展にも寄与する。
|
Research Products
(10 results)