2013 Fiscal Year Research-status Report
異なる神経集団間の機能的結合の制御に関する細胞・回路機構:振動的神経活動の役割
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24700312
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 賢治 東京大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (60446531)
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Keywords | 大脳皮質 / 脊髄 / 振動 / シナプス / 短期可塑性 |
Research Abstract |
振動的神経活動が、異なる部位間の活動伝播にいかに関わり、どのような機能的意義を果たしているかに着目して、モデリング研究を進めている。シナプス前側の細胞から後側の細胞に活動がいかに伝わるかを考える上では、シナプス入力が後細胞に及ぼす効果(シナプス後電位)が、回数を重ねるにつれて促進ないし減弱するというシナプス短期可塑性が極めて重要となる。大脳皮質から脊髄への活動伝播について調べるため、他研究者による過去の研究(Jackson et al., 2006, J Physiol 573:107)で報告されていた生理学実験結果(論文の図から取得したもの)に基づいて、シナプス短期可塑性の数理モデル(Tsodyks & H. Markram, 1997, Proc Natl Acad Sci U S A 94:719およびMongillo et al., 2008, Science 319:1543によるもの)のパラメータ推定を行った。そして、大脳皮質錐体細胞の詳細なモデル(ただし運動野ではなく視覚野の細胞に基づいて過去に作られ報告されていたもの)のシミュレーション結果から得られた活動電位発生の時系列を用いてモデル解析を行い、脊髄のシナプス後細胞側に起こる応答が、前細胞の発火の時間パターン(を規定する前細胞への入力)によっていかに変わり得るかを調べた。その結果、シナプス短期可塑性の特性により、前細胞の尖端樹状突起に加わる抑制性入力がβ周波数帯で集団的に振動している場合には、抑制性入力がそれ以外の周波数帯で振動するか非周期的な場合に比べて、前細胞の活動電位一つあたりのシナプス後電位の平均が小さくなることなどが示唆された。そして、そうした細胞レベルで起こり得る現象が、運動開始に際して大脳皮質と筋肉におけるcoherentなβ律動が減弱するという既知の知見といかに関わりうるかを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大脳皮質から脊髄への伝播に関して、β周波数帯での振動的神経活動がいかなる影響を持ち得るかについて、「研究実績の概要」に記したように興味深い知見が得られてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
大脳皮質から基底核などへの伝播について検討を続けていく考えである。また、大脳皮質の錐体細胞モデルとして、これまで考えてきた視覚野の細胞を元とするモデルのみならず、前頭葉の細胞を元とするモデルについても扱っていけたらと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高性能コンピュータを25年度までに購入する予定であったが、年度内は現存の機器・環境を用いて研究を進め、26年度に最新の機器を購入する方が総合的にみて良いと判断した。また、海外渡航についても、年度内に考えていたものを、26年度に変更することとした。 上述のように、高性能コンピュータの購入、および学会・会議のための海外渡航に使用する計画である。
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Research Products
(2 results)