2012 Fiscal Year Research-status Report
モノアミン神経伝達物質による神経回路の発達と機能調節
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24700317
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
徳岡 宏文 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (10452020)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ドーパミン / 中脳 / 線条体 / チロシン水酸化酵素 / Nurr1 / Nr4a |
Research Abstract |
1.【ドーパミン神経細胞シナプスの発達】中脳におけるドーパミン産生が、ドーパミン神経細胞におけるシナプスの発達に与える影響の解明を目指す。本年度は、生後数日の当研究室で作製された、floxed ThマウスにAAV-Creをfloxed Thマウスの中脳腹側に投与し、中脳黒質におけるTH遺伝子の組換えを目指した。その予備実験として、生後数日の野生型マウスにAAV-GFPを投与した所、GFPの発現を認めた。次に、同様に生後数日のfloxed Thマウス中脳にAAV-Creを投与した。4週間後にTHタンパク質の発現変化を免疫染色により確認したが、THタンパク質の減少は認められなかった。その理由として、Creの発現が十分でないことが考えられた。現在、より発現量の高いAAVベクターに変更し、Th遺伝子の組換えを試みている。 2.【Nurr1誘導機構】NRr4a核内転写因子ファミリーの一つ、Nurr1はドーパミン神経細胞の分化や、ドーパミン神経伝達のための遺伝子発現に重要である。Nr4aはまたImmediate Early Gene (IEG)と考えられているが、その発現誘導の仕組みはよく知られていない。本研究では、中枢神経細胞のモデルとして良く用いられる培養海馬神経細胞を主に用い、Nurr1の発現誘導の分子機構を調べた。まず、神経細胞の興奮性を上昇させた所、Nurr1の発現が顕著に増加した。また、電位依存性カルシウムチャンネルの阻害剤によりNurr1の誘導が低下した。さらに、カルシニューリンの阻害剤によりNurr1の誘導が押さえられた。以上の結果から、中枢神経細胞における神経活動依存的なNurr1 の誘導には、電位依存性カルシウムチャンネルとカルシニューリンが重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.【ドーパミン神経細胞シナプスの発達】floxed Thマウス(Tokuoka et al, 2011)はドーパミン合成酵素であるチロシン水酸化酵素(Th)の遺伝子座にloxP配列を挿入したものである。このマウスにAAV-Creをfloxed Thマウスの中脳腹側に投与し、中脳黒質におけるTH遺伝子の組換えを試みた。まず予備実験として、生後数日の野生型マウスにAAV-GFPを投与し、4週間後に免疫染色によりGFPの発現を確認した所、中脳および投射先である線条体において、GFPの発現を認めた。次に、同様に生後数日のfloxed Thマウス中脳にAAV-Creを投与した。4週間後にTHタンパク質の発現変化を免疫染色により確認したが、THタンパク質の減少は認められなかった。その理由として、Creの発現が十分でないことが考えられた。現在、より発現量の高いAAVベクターに変更し、Th遺伝子の組換えを試みている。 2.【Nurr1誘導機構】培養海馬神経細胞にて、細胞の興奮性をGABAA受容体アンタゴニストのbicucullineと細胞外液中のKCl濃度を20 mM上昇させた所、Nurr1の発現が顕著に増加した。神経細胞の興奮性は様々な仕組みによってモニターされていると考えられるため、阻害剤により各種チャンネルの関与を調べた。その結果、電位依存性カルシウムチャンネルの阻害剤によりNurr1の誘導が低下した。また、流入したカルシウムから下流のシグナル機構を調べた所、カルシニューリンの阻害剤によりNurr1の誘導が押さえられた。以上の結果から、中枢神経細胞における神経活動依存的なNurr1 の誘導には、電位依存性カルシウムチャンネルとカルシニューリンが重要であることが明らかとなった。 総合的には、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.【ドーパミン神経細胞シナプスの発達】現在、より発現量の高いAAVベクターに変更し、Th遺伝子の組換えを試みている。もしTh遺伝子の組換えに成功した場合には、以下の実験によりシナプスの発達を調べる。A) パッチクランプ法により中脳ドーパミン神経細胞におけるmEPSCまたはmIPSCを調べる。これにより、ドーパミン合成能力の有無と、興奮性および抑制性入力の発達の関係を調べる。B) 変化が見られた場合には、受容体の阻害剤などを用い、分子機構を調べる。C) 免疫組織化学染色により、シナプスの形態的変化や、シナプスの主要分子の発現の変化などを調べる。もし遺伝子組換えがうまく行われない場合には、既存のCreマウスの使用などを検討する。 2.【Nurr1誘導機構】電位依存性カルシウムチャンネルには多くのサブタイプがある。サブタイプ特異的な阻害剤を用い、それぞれのサブタイプの関与を明らかにする。さらに、神経細胞体における各電位依存性カルシウムチャンネルのサブタイプの働きを記録し、Nurr1誘導との相関性について調べる。また、カルシニューリン以下のシグナル伝達について、転写誘導機構を含めて解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度にTh遺伝子組換えを行い、さらに組織化学的、電気生理学的解析を進める計画していたが、予定を変更しこれらの計画を次年度にまわしたため残額が発生した。発生した残額は、上記推進方策に従い、生化学、分子生物学、生理学関連の試薬類、またマウスの維持・購入費など、主に消耗品を購入する原資とする。
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Research Products
(4 results)