2013 Fiscal Year Research-status Report
ストレス応答タンパク質M6aのエピジェネティクスからみる神経可塑性とその異常
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24700319
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
本多 敦子 新潟大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40467072)
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Keywords | 脳形成 / 神経発生 / 神経極性 / 子宮内エレクトロポレーション / エピジェネティクス / トランスジェニックマウス / ラミニン基質 / 転写抑制酵素 |
Research Abstract |
M6a発現の脳形成における役割とその抑制による作用について、分子レベルから細胞、脳組織に至るまでを解析した。分子レベルにおいて、生化学的にM6aと神経極性決定を制御する分子との相互作用を調べ、その下流に既知の神経極性決定経路があることを明らかにした。また、M6aが特定の微小膜領域に存在し、M6aの発現がその膜領域における神経極性決定関連分子の分布や活性に関与する事を明らかにした。細胞レベルでは、siRNA導入によりM6a発現抑制した海馬・大脳皮質や、M6aトランスジェニックマウスの海馬・大脳皮質の神経細胞の発生過程を調べ、M6aの発現抑制が、ラミニン基質上における神経極性決定を阻害する事を明らかにした。組織レベルにおいて、子宮内エレクトロポレーションを用いてマウス胎仔脳へのshRNA導入をおこない、脳内においてM6a発現が抑制された際の脳形成への影響を調べた。shRNAと共発現するGFPの解析から、導入細胞の脳内における発生過程を調べたところ、導入細胞の発生過程の遅延がみられた。今後、更に組織レベルでの解析が必要とされるが、上記の結果から、M6a発現が、特定の微小膜領域において神経極性決定関連分子と相互作用し、神経極性決定を制御し、脳形成において重要な役割を持つことを明らかにした。また、M6aの発現抑制が、神経極性決定を阻害し、脳形成の遅延を引き起す事を明らかにした。 これらの成果は、本研究課題であるM6a発現のエピジェネティックな抑制が、shRNAと同様に脳形成を阻害し得る事を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに、細胞レベルにおけるM6aの発現抑制が神経極性決定を阻害すること、またその分子機構を明らかにしてきた。更に、子宮内エレクトロポレーションを用いたshRNA導入による、マウス胎仔脳でのM6aの発現抑制が、脳形成における神経発生を停滞させることを確認した。このことは、M6a発現とその抑制が、細胞レベルだけでなく、脳形成に深く関与している事を初めて示唆するものであり、本研究目的を満たしている。しかし、細胞レベルでのM6aのエピジェネティクス制御機構の解明が未だ不十分であり、shRNA導入によるM6aノックダウンマウス脳において組織解析が、更に必要であることから、本研究の目的達成についてやや遅れていると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
1、子宮内エレクトロポレーションを用いたマウス胎仔脳におけるshRNA導入により、in vivoにおけるM6a発現抑制が、脳形成においてどのように作用するのかを明らかにする。既に、shRNAを導入した胎仔脳内において、神経発生過程が遅延していることを確認している。今後、これらの脳組織を詳しく解析することにより、M6a発現が作用する領域や時期、その役割等を解明する。 2、神経細胞内におけるM6a発現のエピジェネティクス制御機構を明らかにする。既に、in vitroでのsiRNAによるM6a発現が、神経発生過程における極性決定を阻害する事を明らかにしており、同様な作用がエピジェネティックなM6aの転写抑制により生じるか検証する。神経細胞に、遺伝子導入によりヒストンメチル化酵素を発現させ、人為的にエピジェネティックな転写抑制を誘導し、M6a発現量の変化とその作用を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究のエピジェネティック変化を解析するために、M6aに関するトランスジェニック(TG)マウス作成を行ったが、当該マウス作成にかなりの時間を要し、解析可能な状況となったのが最終年度末であった。その結果、in vivo RNAi法による極性決定の研究の条件検討が遅れることとなったため、その検討に充当する予定だった部分の未使用額が生じた。 1) in vivo RNAiおよびTGマウスを使う実験の解析、2) エピジェネティクスによるM6a発現抑制の検証、及びその成果発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充当する。 1、脳の包埋切片による免疫組織解析、スライス脳におけるGFP発現神経細胞のイメージング解析、生後マウスの行動解析を行う。 2、神経細胞への転写抑制性酵素の遺伝子導入により、人為的にエピジェネティックな転写抑制を誘導、M6aの発現への作用と神経細胞への作用を検証する。
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