2012 Fiscal Year Research-status Report
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24700330
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
実木 亨 横浜市立大学, 医学部, 助教 (10546675)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | シナプス可塑性 / 抑制性伝達 / 体性感覚 / 機能代償 |
Research Abstract |
本研究では抑制性神経伝達の変化に着目し、代償的な感覚機能の向上が長期的に維持されるメカニズムの解明を目的としている。 これまでに視覚機能の剥奪後2日目において、体性感覚野の4層から2/3層で形成される興奮性伝達(大脳皮質の縦方向の神経伝達)が強化され、剥奪後7日目において興奮性伝達の強化は見られなくなるが、大脳皮質2/3層-2/3層間の側方向への抑制性伝達(側方抑制)が強化されるという事を明らかにしてきた。 しかしながら、はじめに縦方向の興奮性入力が強化され、その後側方向への抑制性入力が強化されるようになるための回路メカニズムが不明である。今回申請者は視覚剥奪初期において強化された4層-2/3層間の興奮性伝達は、2/3層の錐体細胞だけでなく、抑制性の介在神経細胞への入力においても強化され、その入力により活性化され側方抑制が強化されているのではないかという仮説を立て、その検証に取り組んだ。 抑制性介在神経への興奮性伝達の変化を電気生理学的に解析するために、記録した神経細胞ごとにcurrent clamp法により神経細胞の発火パターンを確認したうえでその細胞への興奮性入力を記録することを試みた。その結果抑制性神経細胞様の発火パターンを示す神経細胞への興奮性伝達も強化されていることがわかった。今後は抑制性神経細胞特異的にAMPA受容体のドミナントネガティブ体の導入(ウィルスベクターは完成済み)による興奮性伝達抑制を行い、感覚機能向上おける側方抑制の役割を明らかにする。 本研究は機能回復が難しいとされる成熟した神経回路において薬などによる外的な処置ではなく、内在性のメカニズムにより機能向上を示すことが出来た。このような知見は脳損傷後の回復期を過ぎた患者に対し、効率よく機能回復を誘導するための強力な新しいリハビリテーション法の開発へ大きく寄与できることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のとおり、視覚機能の剥奪により体性感覚野の2/3層-2/3層間側方抑制が強化されるとともに、抑制性神経細胞への4層からの2/3層への縦方向の興奮性入力も強化されるという仮説を明らかにすることが出来たため、おおむね順調に研究計画が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は抑制性神経細胞特異的にAMPA受容体のドミナントネガティブ体の導入(ウィルスベクターは完成済み)による興奮性伝達抑制を行い、感覚機能向上おける側方抑制の役割を明らかにするとともに 側方抑制を強化する細胞外因子をセロトニンなどの神経修飾物質を中心にマイクロダイアリシス法を用い解析し、側方抑制強化が維持されるメカニズムを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の今後の研究の推進方策を達成する上で、電気生理学実験、分子生物学実験、行動実験を行う必要があるため、実験動物、分子生物学実験消耗品、電気生理学実験消耗品、行動実験消耗品に研究費を使用する予定である。 また研究成果の発表・議論のためさらには研究の発展に必要な国内外の学会や研究会(第36回神経科学大会、京都;2013北米神経科学会 Sandiego; Cold spring harbor meeting ‘Wiring the brain’New York; シナプス研究会 岡崎)参加等にも使用予定である。 当初、ライカ社の急性脳切片作成用のビブラトーム購入のため200万円を計上していたが、国内企業の堂坂社(DSK)のリニアスライサーに変更し購入価格が安くなったため、繰越金が生じた。
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Research Products
(3 results)