2012 Fiscal Year Research-status Report
新規視床下部神経核SGNの摂食・エネルギー代謝調節メカニズムへの関与の解明
Project/Area Number |
24700331
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
森 浩子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60616895)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | energy / metabolism |
Research Abstract |
本研究の目的は、申請者が新たに同定した神経核, 視床下部矢状核: Sagittalis Nucleus (SGN)の生体での機能の解明である。SGNは摂食・性行動の中枢制御を行う脳領域内に位置し、女性ホルモンや摂食関連ペプチドの作用と協調し摂食パターンの調整に関与している可能性が高い。本研究では、新規神経核SGNの摂食制御・エネルギー代謝調整機構への関与を検証している。 平成24年度に実施した主な研究内容は、SGN領域とその周辺領域における摂食関連ペプチド及びそれらの受容体分布のマッピング(脳組織を用いた組織学的解析)である。 これまでの申請者の研究で、SGN領域にはエストロゲン受容体α、GABAの合成酵素:GAD67、カルシウム結合タンパク:calbindinD28k、ヒスタミン受容体(H1)が発現していることを確認した。本年度は、SGN領域において以下の摂食関連ペプチドとそれらの受容体の分布を免疫組織化学染色法によって確認し、成体ラット脳SGN領域における摂食関連ペプチドの局在を調べた。その結果、SGN領域においてはニューロペプチドY、メラニン凝集ホルモンは免疫陰性。一方、α-MSH、コカイン-アンフェタミン調節転写産物、アグーチ関連蛋白、グレリン受容体、メラノコルチン4受容体は免疫陽性であった。 興味深いことに、脳内での脂質系エネルギー代謝に必須であるケトン体利用酵素:CoA転移酵素(succinyl-CoA:3-ketoacid CoA transferase: SCOT)がSGN領域およびその周辺領域に発現していることが新たに分かった。SCOTはケトン体からのエネルギー産生を担っており、睡眠中や断食時および飢餓時など、低血糖な状況下で重要な働きをもつと考えられる。中枢の満腹・空腹感の獲得や、栄養状況に応じた全身の代謝調整にも関与している可能性が見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度は、SGN領域およびその周辺領域における摂食関連ペプチド類およびそれらの受容体の局在について、免疫組織化学染色法を用いて十分な検証を行うことができた。とくに脳内での脂質系エネルギー代謝に必須であるケトン体利用酵素:SCOTがSGN領域およびその周辺領域に発現していることが新たに分かり、脳の摂食・代謝調整における脂質系エネルギー基質の重要性と、それらを中心とした新たな制御回路の解明への手ごたえを感じている。これをうけて、今年度は、免疫組織化学染色法による組織学的検証のほかに、実験動物を使った機能解析を開始している。具体的には栄養状態の変化によるSGNの構造およびSGN神経活動へのフィードバック作用について、マウスへの特殊飼料給餌を介して調べている。摂食制御系および代謝機能の調整への関与が見込まれるSGNが、生体の栄養状態(飢餓・低栄養状態、高栄養状態)や摂取する栄養素の違い(蛋白質、脂質、炭水化物含有率)によっていかなる影響を受けるか、動物にカロリーや栄養素の異なる飼料を与え飼育し、摂食によるフィードバック作用を検証している。現在、条件検討ならびに検体数確保のため、特殊飼料による飼育を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、SGNを中心とした脳の摂食行動制御機構における脂質系代謝の働きに注目して研究を進めたい。申請者が実施した平成24年度の研究成果により、脳内での脂質系エネルギー代謝に必須であるケトン体利用酵素:SCOTがSGN領域およびその周辺領域に発現していることが新たに分かった。これまでの研究では、脳内のエネルギー代謝機構は糖代謝系のエネルギー基質を中心にワークしていると考えられてきたが、申請者の得た成果からは、脂質代謝系のエネルギー基質もまた、糖代謝系と同様に、代謝および摂食行動制御に関与している可能性が見いだせた。絶食や飢餓状態においては、供給が不安定な糖代謝系よりも恒常的な脂質代謝系のほうがより中心的な役割を担うと考えられるため、この新たなエネルギー代謝機構に関して研究を継続することが重要であると考えている。平成24年度に得た、組織学的知見をもとに、脳内の脂質代謝系と摂食関連ぺプチドの相互作用を実験動物を使用し、機能解析を進める予定である。動物実験では、動物にカロリーや栄養素の異なる特殊飼料を与え飼育し、摂食による脳へのフィードバック作用を検証する。生体の栄養状態の違いによって、脳がいかなる影響を受けるか、一定期間飼育後に、SGNを含む関心領域の脳組織を採取し、ウェスタンブロットによるタンパク定量解析、並びにreal-time PCRを用いたmRNA発現量の解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は京都府立医科大学の中央研究室(実験動物室含む)の研究施設を利用する。同研究施設には各種解析機材が完備されており、本実験計画の遂行に当たって十分な設備とサポートが用意されている。したがって、新たな備品の購入の必要はない。本研究の遂行にあたっては、消耗品の調達が必要であるため、消耗品購入費を中心に使用を見込んでいる。学会での成果報告のための旅費を含めたほか、国際雑誌にて研究成果を発表する計画であるので論文校正料(謝金)および投稿料の支出を予定している。 研究費使用計画内訳 物品費として:970000円 旅費として:100000円 人件費・謝金として:50000円 その他;80000円
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] 未定
Author(s)
森 浩子
Organizer
脳の世紀講演会
Place of Presentation
京都市立堀川高等学校
Invited
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