2012 Fiscal Year Research-status Report
Hox変異マウスを糸口にしたトノトピー形成メカニズムの解明
Project/Area Number |
24700336
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya Bunri University |
Principal Investigator |
成田 裕一 名古屋文理大学, 健康生活学部, 准教授 (40360614)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換、スイス |
Research Abstract |
Hoxa2/Hoxb2 cKOを用いて神経トレーシングによる解剖学的な解析を行った。通常の神経ラベル法では解析が困難であったため、研究代表者が開発した定量的なトノトピー解析法を用いて行った。Hoxa2/Hoxb2 cKOおよび対照群マウスの固定した頭部を解剖し、内耳の頂部と基底部を別々の神経トレーサーでラベルし、PFA中で7~10日インキュベートした。その後、内耳および脳幹を取り出して、内耳でのトレーサーの拡散具合を定量するとともに、脳幹のビブラトーム切片を作成し、蝸牛神経核中でトレーサーによりラベルされている領域についても定量化した。次にこれら2つの数値の間の関係を、Hoxa2/Hoxb2 cKOと対照群の間で比較した。その結果、Hoxa2/Hoxb2 cKOでは標的エリアが相対的に大きくなっていることを明らかにすることができた。 次に、既に調整済みであった、8kHzおよび15kHzの音刺激を90分間与えたマウスの脳幹の凍結切片を作成した。各周波数によって活性化させた領域(周波数バンド)を可視化するため、数種のcFos抗体を用いて免疫染色条件の確立を行った。条件設定に予定よりも時間がかかったため、詳細な解析は今後に残されているが、Hoxa2/Hoxb2 cKOマウスにおいて8kHzおよび、15kHzそれぞれに相当する周波数バンドが対照群のものと比較して太くなっている様子が確認できた。また、8kHzと15kHの2つの音刺激を与えた場合に、対象群マウスでは2本のバンドがはっきり確認できるのに対して、Hoxa2/Hoxb2 cKOマウスでは、それらの境界が不明瞭になるという表現形が観察された。これらの結果はいずれも、Hoxa2およびHoxb2がトノトピーの形成に重要な役割を果たす因子であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Hoxa2/Hoxb2 cKOで明らかな表現形が観察できたが、Hoxa2のみ、もしくはHoxb2のみのコンディショナル変異マウスで同様の表現形が観察できるのかどうかを現在追加で検証中であるため、やや予定よりも遅れ気味になってしまっている。 また、cFos抗体による免疫染色法の確立に予想よりも時間がかかったため、cFosバンドの太さなどを定量する解析まで進めることができなかった。 しかし、いずれの解析においても表現形はほぼ検出できているので、早い時期に定量化を終えて来年度の予定に進んでいきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Hoxa2/Hoxb2 cKOマウスにおいては、内耳神経の蝸牛神経核への投射が不正確になっている(標的エリアが拡大している)ことが予想される。その要因としては、1. 軸索自体の走行異常、2. 軸索側枝の長さの異常、3. 軸索側枝の方向性の異常などいくつもの可能性が考えられる。そこで、この要因を明らかにするために、内耳神経のsingle axonレベルでの解析を行う。(1)内耳領域へ蛍光デキストランを注入し、少数の内耳神経のみをラベルする。(2)脳幹を取り出し、4%PFAで固定した後、蝸牛神経核を含むsagittal切片を作成する。(3)共焦点顕微鏡で画像化し、単一の内耳神経からの投射を再構築する。(4)発生段階を追って解析を行うとともに、Hoxa2/Hoxb2 cKOと対照群の間で比較検討することにより、トノトピーの形成過程を詳細に記述するとともに、トノトピー形成におけるHoxの機能を明らかにする。 また、Hoxは転写因子であるため、その下流で様々なガイダンス分子がトノトピーの形成に関与していると考えられる。そこで、 Hox変異マウスの蝸牛神経核における遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析する事により、トノトピー形成に関わる分子的なメカニズムの全貌を解明する。まずは候補遺伝子の発現プロファイルを、in situハイブリダイゼーション法または免疫染色、および定量PCR法により、詳細に解析する。続いて、マイクロアレイにより、Hoxa2/Hoxb2 cKOと対照群の蝸牛神経核で異なる発現パターンを示す遺伝子、つまりHoxの下流でトノトピー形成に関わる遺伝子の候補を抽出することによりHoxの下流因子について網羅的な解析を行っていく計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
解析を行っていく上で、最終的に学外の研究施設において共焦点顕微鏡による撮影を行う場合でも、自分の研究室で蛍光観察及び写真撮影を事前に行っておく必要性を強く感じた。そのため、本年度購入した生物顕微鏡に追加で設置できる蛍光ユニットおよび撮影用のCCDカメラを購入する予定である。 それとともに、当初の予定通り、in situ関係の試薬やsingle axonトレーシングのための神経トレーサーなどの購入に大部分の研究費を使用する計画である。
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