2012 Fiscal Year Research-status Report
前頭皮質5層局所回路における興奮性―抑制性情報処理システムの解明
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24700338
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
高田 美絵子(森島美絵子) 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 助教 (30435531)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 錐体細胞 / 抑制性細胞 / シナプス結合 |
Research Abstract |
大脳皮質5層錐体細胞は、皮質内の情報を、皮質外へと出力することが知られている。皮質外領域に出力された情報は、特に2つの情報ループ(線条体-大脳基底核ループ、橋核-小脳ループ)にそって処理が進むことに着目し、2種類の独立した大脳皮質5層錐体細胞、線条体投射錐体細胞:CCS細胞、橋核投射錐体細胞:CPn細胞を用いて、これまでに、2種の錐体細胞は、グループ間でそれぞれ異なる情報処理をし、さらに、2種のグループ間において、情報の流れに方向性があることを明らかとした。このような大脳皮質内錐体細胞の情報処理システムに、どのように抑制性細胞が作用するかを明らかとしたいと考えた。そこで、2種類の錐体細胞と、2種類の抑制性細胞の伝達様式について明らかとするために、2種類の錐体細胞を蛍光標識したスライス切片を作成し、錐体細胞(CCS細胞、CPn 細胞)と抑制性細胞を、2細胞同時ホールセル・パッチクランプ法を用いて電気記録し、そのシナプス結合性について調べた。特に、抑制性細胞の中でも、多くを占める、Fast spiking 細胞(FS細胞)との相互作用を調べたところ、FS細胞からそれぞれの細胞への結合確率は、それぞれ、45%, 49%と非常に高い確率で結合していた。また、3細胞同時記録したところ、FS細胞は、2種類の異なる錐体細胞にシナプス結合する確率は、FS細胞が、同時に同種類の錐体細胞に結合する確率が変わらないことが明らかとなり、FS細胞は、近傍の錐体細胞にランダムな抑制をすることが示唆された、また、2種類の錐体細胞から、FS細胞への結合様式をみたところ、CCS細胞からFS細胞への結合確率(26%)は、CPn細胞からFS細胞(16%)に比べて有為に高く、FS細胞の働きを、CCS細胞がより制御し、情報の流れをCCS細胞がより強くコントロールすることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抑制性細胞と2種類の錐体細胞(CCS細胞、CPn 細胞)との2細胞もしくは、3細胞同時ホールセル・パッチクランプ記録によって結合様式、シナプス伝達様式、周波数特性を調べることが、本年度の計画であった。FS細胞から錐体細胞へのシナプス結合がランダムであることはすでに様々な研究者が明らかとしているが、投射先が異なる錐体細胞からFS細胞への興奮性シナプス入力特性が異なることが明らかとできたことは、有用な研究であると考えれる。また、現在、LTS細胞との2種類の錐体細胞関係についても実験を進め、ほぼ、データは集め終段階までできている。そのため、計画どおりに進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、研究課題にそって、電気生理実験を行う。平成25年度は形態解析も行う。記録終了後のスライスを50μに再切を行い、細胞内染色をし、標本を作成する。3次元再構築システムであるニューロルシダを用いてこれらの標本から細胞の形態を再構築し、形態解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、引き続き、電気生理実験を行っていくが、より実験を効率よく進めるために、蛍光システムの改良と、多細胞同時ホールセルパッチクランプの効率をあげるためのシステムのバージョンアップを行う予定である。
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