2012 Fiscal Year Research-status Report
行動決定におけるラット前頭前野錐体細胞と介在細胞の役割と皮質下投射細胞の出力情報
Project/Area Number |
24700345
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
半田 高史 独立行政法人理化学研究所, 脳回路機能理論研究チーム, 研究員 (40567335)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
行動決定におけるラット前頭前野背外側部(dlPFC)の錐体細胞と介在細胞のの役割と神経回路網における出力情報を理解することを目的とする。 1.多個体訓練機を用いた行動選択課題の効率的訓練の確立を行った。これまで脳定位固定下で行動選択課題を1個体ごとに訓練してきたが,多個体同時訓練機を駆使し、訓練方法を工夫することで課題訓練ラットの量産化に成功した。その結果,課題訓練効率を増加することができ(3~4個体同時訓練),ラットにつき1~2個の細胞を記録することが限度である傍細胞記録法を適応する訓練された披験動物数を効率的に得ることができるようになった. 2.前頭前野背外側部(dlPFC)から背側線条体と視床内背側(MD)核に投射する錐体細胞の出力情報を電気生理学的および組織学的に調べるために,まずdlPFC領域からの投射様式を確かめた。これまで多細胞記録を行ってきたdlPFC領域に相当する場所に順行性トレーサーBiotinylated Dextran Amine (BDA)を微量注入し,5日間の生存期間を経て灌流固定ののち脳切片を作成する.脳切片はABC-DAB法により細胞の微細な形態を再構成し観察した結果、背側線条体や視床MD核外側部に神経終末を確かめることができた。さらに背側線条体もしくは視床MD核外側部に逆行性FluoroGoldを微量注入し、5日間の生存期間を経て灌流固定・脳切片の免疫組織学的標識法により蛍光発色させた。その結果、dlPFCを含む前頭前野の細胞がラベルされたことを確認した。 3.dlPFCの細胞集団活動と出力情報の生理学的解析 上述の成果の結果、背側線条体および視床MD核に投射する領野をターゲットとして、課題訓練ラットからマルチユニット記録および傍細胞記録を同時に行う実験が一定のペースで実施するに至っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.ラット1匹から1,2個の神経細胞の発火活動が記録できる傍細胞記録法を用いて十分なデータ数を得るには、訓練されたラットが多個体必要である。当該年度において多個体同時訓練法を確立できたことにより、傍細胞記録法を適応することが十分妥当となった。これにより投射性錐体細胞の応答特性を調べるために必要なデータ数を効率的に得られることが期待される。 2.これまでのマルチユニット記録実験のデータを詳細に解析したことにより、錐体細胞と介在細胞の応答特性は似ている点が多いことが示唆された。また、それら細胞集団の応答特性を調べた結果、行動選択特異的に変化する多細胞集団の挙動を示すことができた。 3.他領域に投射するdlPFC錐体細胞が細胞はどのような情報をコードするかを明らかにするにはdlPFCが線条体や視床核のどこに投射するかを確かめる必要がある。予備的実験によりdlPFC領域の錐体細胞は背側線条体・視床MD核に投射することを解剖学的に確認したので、神経トレーサーと傍細胞記録法を組み合わせて投射性錐体細胞の出力情報に直接迫ることが可能となってきた。これにマルチユニット記録を合わせることで、課題遂行中のラットから多細胞集団と単一神経細胞の発火活動を同時に記録する実験を効率的に実施するに至った。これらの実験を継続し、必要なデータ数を得ることが今後の課題となるが、研究目的に向けて順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度はマルチユニット記録・傍細胞記録・神経トレーサ注入を組み合わせた実験を継続し、行動選択課題遂行中のラットからdlPFCの多細胞集団、単一細胞の発火活動を記録する。 錐体細胞および介在細胞の応答特性,及び背側線条体に投射するdlPFC錐体細胞の課題関連応答特性の解析を行う。マルチユニット記録実験の結果からは、錐体細胞と介在細胞がどのような特徴を持つかを運動関連情報や報酬関連情報に注目して調べ、それらが集団となったときどのような活動パターンを示すかを解析する。さらに、傍細胞記録およびラベルした細胞が神経標識トレーサーと二重標識されたかどうかを手がかりに、投射性錐体細胞の出力情報を電気生理学的および組織学的に調べる. 投射性錐体細胞に関しては再現性よくおおむね正確に神経標識トレーサーを注入できる背側線条体を主なターゲットとして調べる方策とする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は、神経トレーサーを微量注入し神経投射を確認する予備実験の段階ではインジェクターを用いなくても実験が順調にすすんだため予算が余った。 H25年度は、本実験において神経トレーサーの微量注入をより再現性よく行うために、より正確に注入が制御できる微量インジェクター用ポンプを購入する予定である。 また、使用しているマルチユニット記録用電極(シリコンプローブ)が不足した場合にはその補充のため購入する。 他は、コンピュータや学会発表での旅費や論文投稿費用などに使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)