2012 Fiscal Year Research-status Report
イノシトールリン脂質PIP2のシナプス構造可塑性への影響
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24700348
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上田 善文 独立行政法人理化学研究所, 記憶メカニズム研究チーム, 基礎科学特別研究員 (60391877)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | PIP2 / 蛍光寿命 / シナプス可塑性 / シナプス構造可塑性 |
Research Abstract |
シナプスは、入力に応じてそのサイズを変化させるため、神経回路ネットワークに柔軟性を与え、記憶、学習に貢献する。シナプスのサイズはアクチンの重合、分解によって制御されているが、ホスファチジルイノシトール4,5二リン酸(PIP2)は、アクチンの重合、分解に関わるほとんどのタンパク質に結合するためシナプスサイズの制御に必須であると考えられるものの未だ検証されていない。そこで、本研究では、スパインにおけるホスファチジルイノシトールリン脂質PIP2の動態可視化を行うことを目的としている。今年度は、プローブの設計を行なった。申請者は、過去3年間、当研究室において海馬スライス神経細胞において、PIP3の動態を観察するために、蛍光寿命を基にしたプローブを開発し、スパインサイズの変化に伴い、スパインにおいてPIP3が減少することを明らかした。さらに、スパインでPIP3が減少する一方、スパイン上に、頻繁に見られるspinule構造(フィロポディア様突起物)においては、PIP3が増加することが明らかになった(現在revision中)。申請者のプローブ分子の特徴は、脂質結合ドメインを変えることにより、その他の脂質分子に応用可能であるため、この特徴を利用して、PIP2プローブを作製した。作製したPIP2プローブを、海馬スライスCA1錐体細胞に遺伝子銃によって発現させた。PIP3プローブの場合は、PIP3が樹状突起に比べて、スパインにより多く蓄積していたが、PIP2プローブでは、樹状突起とスパインでそれほど差がないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までは、PIP2プローブの作製などを行い海馬スライスCA1錐体細胞においてPIP2の細胞内局在を明らかにした。海馬スライスにおいて脂質の可視化は、未だ行われておらず申請者の研究が先端である。一年目において、PIP2の細胞内局在が明らかにしたと言う点で、順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は、新しい赴任先に移るに当たり環境および実験設備が変わる。 今まで同様2光子顕微鏡を用いて実験を進めていく。 2光子顕微鏡は、9月くらいに納入予定で、蛍光寿命測定装置を取り付ける必要がある。セットアップ自体は、申請者自身が問題なく遂行することができるが、蛍光寿命測定装置の納入予定日は未定である。よって、蛍光寿命ではなく同じ蛍光共鳴エネルギー移動を原理とした蛍光強度比を基にしたFRET検出法も同様に平行して進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度、特に高額な機器などを購入する必要もなく、25年度に必要となる費用のために、使用を控えた。今年度は、遺伝子工学や細胞培養のための試薬を購入するための費用。および、学会発表の参加費、交通費および論文投稿の際の費用などに当てる予定である。
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