2013 Fiscal Year Research-status Report
神経活動依存的な軸索伸長における分子クラッチタンパク質shootin1の役割
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24700349
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
島田 忠之 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 主席研究員 (80379552)
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Keywords | 神経活動 / 軸索伸長、分枝形成 / てんかん / 神経可塑性 / 神経回路網 |
Research Abstract |
1,海馬スライス培養におけるshootin1過剰発現に伴う海馬歯状回顆粒細胞の軸索形態変化の観察 ラット海馬スライス培養においてshootin1の過剰発現を試みたが、shootin1の発現を確認することができなかった。コントロールとして用いている遺伝子の発現は再現性良く観察されることから、遺伝子導入手法自体に問題はない。またプロモーターはアクチン由来であるため発現レベルの制御も受けていないと考えられる。すなわち、成熟した神経細胞においてはshootin1タンパク質の分解が行われていることが考えられた。 2,Neuritinによる海馬歯状回顆粒細胞の軸索分枝形成への寄与の解明 Neuritinノックアウトマウスより海馬歯状回顆粒細胞を得て、軸索の形態を観察した。野生型とノックアウトマウスの間で、通常時の軸索分枝形成に有意な差は見られなかったが、培地中にカイニン酸を添加したところ、野生型では軸索の分枝形成が誘導されたが、ノックアウトマウスでは分枝の形成が抑えられた。Neuritinの過剰発現では分枝の形成が誘導されるため、この結果は、Neuritinが神経活動依存的な軸索分枝形成に寄与することを示唆する。 3,Neuritinと相互作用するタンパク質分子の探索 免疫沈降実験より、NeuritinとFGF受容体が相互作用することを見出した。培地中にFGFを添加したところ、顆粒細胞の軸索分枝形成が誘導された。またNeuritinノックアウトマウス由来の顆粒細胞では、この分枝形成が有意に抑えられた。さらに、Neuritin過剰発現により誘導される軸索分枝形成は、FGF受容体の阻害剤を培地中に添加することで抑制することができた。これらの結果は、FGFシグナルが顆粒細胞軸索の分枝形成を促進すること、Neuritinが、そのシグナルカスケードを正に制御する方向で関与していることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Shootin1に関する研究は当初の予定とは異なり、成熟した神経細胞または脳組織にshootin1を発現させることそのものが非常に難しいことが明らかになった。そのためshootin1の研究は目的の達成は難しくなっている。 しかし、神経活動に依存して発現するタンパク質であるNeuritinに関しては、Neuritinが神経細胞軸索の形態に及ぼす影響をはじめ、相互作用するタンパク質、活性化させる細胞内シグナルなどが明らかにすることができた。 既知のshootin1の機能とてんかん発作に起因する海馬歯状回顆粒細胞における軸索の異常な分枝の形成の解明という小目的ではなく、てんかん発作に起因する海馬歯状回顆粒細胞における軸索の異常な分枝の形成を誘導するタンパク質の単離と機能解析という大目標は達成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
てんかん発作に起因する海馬歯状回顆粒細胞における軸索の異常な分枝の形成のメカニズムについて、NeuritinとFGFを中心とした解析を行う。ヒト、マウスにおいては22種類のFGF、4種類のFGF受容体が発現している。これらのうち顆粒細胞軸索の分枝形成に関与するものを明らかにし、さらにNeuritinとの相互作用することで分枝形成を誘導するものを明らかにする。 Neuritinによる顆粒細胞の軸索分枝形成が、実際のてんかん発作に関連するかを明らかにする。顆粒細胞の軸索分枝形成は、神経細胞の過剰興奮を引き起こす異常な回路の形成につながっており、その結果としててんかん発作が継続して起きたり、てんかんの悪性化が起きているという説が有力視されている。Neuritinノックアウトマウスを用い、神経活動の活性化を引き起こす薬剤を継続的に投与する、てんかんの悪性化獲得モデルにおいて、野生型マウスとの間にどのような差があるかを観察する。発作強度がどのように上昇するか、また発作後の脳組織の変性が野生型とノックアウトマウスとの間でどのように異なるかを解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
所属研究室より依頼される研究が当初の予定より大幅に増加し、本研究に割り当てるエフォートが減少したため。 ノックアウトマウス飼育費用の増加、発作誘導薬剤の新規購入などに割り当てたい。
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Research Products
(6 results)