2013 Fiscal Year Research-status Report
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24700351
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
堀江 正男 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70322716)
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Keywords | ジストニア / ジストニン / マウス |
Research Abstract |
本研究は不随意の運動を生じる神経難病であるジストニアの病態を明らかにすることを目的としており、ジストニアを引き起こすと考えられるジストニン遺伝子に変異を加えたマウス(以下、本マウス)の解析を行う。本マウスがジストニア症状を示すことは既に確認している。以上を踏まえ、平成25年度は本マウスの神経系における組織学的な解析を行い、1) 感覚系および運動系領域における変性について論文にまとめる 2) コンディショナル・アリールにおける局所的ジストニンタンパクの不活性化による表現型の解析を行った。 1)に関しては、本マウスの感覚系領域である後根神経節および三叉神経における変性所見を得た。また運動系領域に関しても、一部の脊髄灰白質ニューロンにリン酸化ニューロフィラメントの蓄積が生じ、三叉神経運動核ニューロンが変性脱落する所見を得た。また小脳-視床-線条体の運動性回路における活動低下が観察された。これらの所見を論文にまとめ、現在European Journal of Neuroscience誌に投稿中である。 2)に関しては、Nestin-Creコンディショナル・アリールにて、中枢神経系特異的にジストニンタンパクを不活性化する実験を行った。しかしながら、不活性化アリールでは運動症状が現れないことから、Nestin-Creによるコンディショナル実験の適正について、現在検討中である。P0-Creコンディショナル・アリールにて、末梢神経系特異的にジストニンタンパクを不活性化する実験を行ったところ、ジストニア症状は現れないが、小脳失調様の運動症状が現れることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したとおり、平成25年度は交付申請書に記載した研究実施計画の通りにおおむね進んでいる。平成24年度および25年度で得られた結果については、論文にまとめて現在投稿中であり、またコンディショナル実験についても末梢神経系特異的にジストニンタンパクを不活性化することで、小脳失調様の運動症状が現れることが分かった。一方、抗ジストニン抗体を用いたヒト脳病理検体のスクリーニングに関しては計画より大幅に遅れており、現在入手したジストニン抗体の有用性を検討している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の実験計画に関しては、先の交付申請書に記載したとおりに進めていく予定であり、本年度は以下に示す三点について解析を行う予定である。一点目は小脳特異的なコンディショナル実験である。交付申請書に記載したCreドライバーを用いた小脳特異的なコンディショナルアリールの作製に先立ち、以下の実験を行う。すなわち、異常なジストニンタンパクを発現する小脳を、小脳ごと除く実験である。この実験を遂行するために、小脳を欠損するマウスであるcerebellessマウスを新潟大学に導入し、cerebellessマウスと本ジストニン欠損マウスとの掛け合わせを既に始めている。CerebellessマウスはPtf1aを原因遺伝子とし、このホモ接合体では小脳がほぼ全て欠く。また、このマウスは著明な運動障害を示すが、正常マウスと同程度の寿命を持ち、子孫を残すことができる。我々はcerebellessマウスとジストニンマウスとの両ホモ接合体を作成し、ジストニア症状の軽減の有無そして延命に関して解析を行う予定である。小脳がジストニア症状の責任中枢であるとすれば、この実験によりジストニア症状の改善が期待される。 二点目はP0-Creを用いたコンディショナルマウスの行動および組織解析である。平成25年度にP0-Creを用いたコンディショナル実験を行い、得られたノックアウトマウス(ジストニンをP0が発現する末梢神経系でのみ不活性化する)は明らかな運動障害を呈していた。平成26年度は新潟大学脳研究所細胞神経生物学分野の崎村健司先生との共同研究で、P0-Creコンディショナルノックアウトマウスの行動学的な解析を行い、その後、組織学的な解析を行う予定である。 三点目は前年度からの継続実験である”ジストニン抗体を用いたヒト脳病理検体のスクリーニング”である。これらの実験終了後、その結果を論文にまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は新潟大学動物実験施設の改修工事があり、改修工事の期間中、動物実験施設での動物飼育数が激減したため、当初予定していた動物飼育予算に達しなかったことが主な原因である。 平成26年度は24年度の計画申請に記載の通り予算を執行する。平成25年度が使用できなかった繰越金に関しては、今年度は動物実験施設での動物飼育数を増加させる予定であるため、その支出に充てる。
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