2012 Fiscal Year Research-status Report
経験依存的な知覚機能変化に伴う神経回路再編成メカニズムの解明
Project/Area Number |
24700362
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
足澤 悦子 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 特別協力研究員 (00446262)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経回路再編成 |
Research Abstract |
平成24年度は、聴覚遮断後の脳内における神経回路形成に与える影響を調べるため、聴覚遮断手術を施して飼育したマウスの視覚刺激に対する聴覚野の活動を調べた。実験二日前から聴覚遮断マウスを暗室で飼育し、二日後に1時間明るい部屋に置いた後灌流固定を行い、免疫染色によって神経活動依存的に発現が上がるc-fosの発現強度を調べた。その結果、聴覚遮断していないマウスに比べて、聴覚遮断したマウスの聴覚野におけるc-fosの発現が上がっていることが明らかとなり、聴覚遮断により、本来は聴覚情報処理を行う聴覚野が視覚情報処理の場となっていることを示唆しており、聴覚野に新たな神経回路が形成されている可能性が示唆された。そこで、新たに形成された神経回路を調べるために、次に聴覚遮断マウスの聴覚野に逆行性に感染してGFPを発現する狂犬病ウイルスを注入し、聴覚野へ投射する神経回路を調べた。聴覚遮断していないコントロールマウスに比べて、聴覚野への異常な投射は今のところ見つかっていないが、投射領域ではなく、投射する細胞数に違いが起きている可能性があり、今後定量的な解析が必要である。 また、聴覚野における神経細胞間シナプス特性を網羅的に調べるために、レーザー光刺激によりケージドグルタミン酸をアンケージングさせる方法を適用した。近年開発された神経細胞に与える害の少ない青色光でアンケージングされるケージドグルタミン酸(Rubi-glutamate)の濃度検討およびレーザー強度の条件検討を行い、最適化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
聴覚遮断手術により、聴覚野の視覚刺激に対する活動の増加を確認することができた。また、レーザー光刺激を用いて大脳皮質神経細胞間シナプス結合の網羅的な解析を行う準備(最適化)もできた。今後は、狂犬病ウイルスによって、新たに形成された神経回路の可視化を定量的に行うための条件検討をする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、聴覚遮断したマウスの聴覚野における神経回路をレーザー光刺激法を用いて電気生理学的に解析を行う。また、回路の再編成が明らかになった場合には、行動実験およびin vivo カルシウムイメージングを行うことにより、回路再編成が行動に与える影響、および脳活動の変化を明らかにすることにより、感覚遮断による神経回路再編成の機構を明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
レーザー光刺激法に用いるケージドグルタミン酸は3回の実験に約8万円かかり、一か月に12回の実験を5カ月行うと仮定した場合、年間に160万円が必要となる。研究費はその費用に充てる予定である。
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