2012 Fiscal Year Research-status Report
新規シェディング調節因子によるアミロイドβ産生調節機構の解明
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24700366
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大野 美紀子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10583198)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβ / シェディング |
Research Abstract |
我々は、メタロプロテアーゼnardilysin (NRDc)が、細胞外ドメインシェディングの活性化因子であることを報告してきた。さらに遺伝子改変マウスの解析から、NRDcがニューレギュリン1(NRG1)のシェディングを介して、神経軸索の成熟と髄鞘形成を制御することを解明した。一方細胞実験系においてNRDcは、アミロイドβ産生を正に制御するβセクレターゼ(BACE1)と、負に制御するαセクレターゼ(ADAM10/17)の双方と複合体を形成し、各々のプロテアーゼ活性調節に関わる事が示された。従ってNRDcがアルツハイマー病(AD)においても重要な役割を持つ可能性が示唆された。 本研究では 1)アルツハイマー病(AD)におけるNRDcの病態生理学的意義の解明、 2) NRDcによるAPP切断酵素活性制御の分子機構解明、 3) NRDcのアルツハイマー病におけるバイオマーカーとしての可能性の検討、を目的として研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)アルツハイマー病(AD)におけるNRDcの病態生理学的意義の解明 NRDc過剰発現マウス(NRDc-Tg)とアルツハイマー病モデルマウスの交配に成功し、Aβ沈着量に差があることを見いだしたが、それが「NRDcによるAPPのα切断の増強によるものである」という仮説のもと、in vivoの系でも二群間でα切断されたAPPの定量を行い、比較検討する。神経細胞特異的NRDc欠損マウスの作製にあたっては、現在NRDc-floxedマウスの作製中であり、Creマウスと交配予定である。 2) NRDcのアルツハイマー病におけるバイオマーカーとしての可能性の検討 アルツハイマー病患者検体(血清・髄液)を用いて、NRDcを測定(高感度ELISAはすでに開発し特許申請済み)し病状・予後との関連を検討する。検体が十分集まらない場合は、ヒトアルツハイマー病の病理組織におけるNRDcの発現様式について、免疫染色法を用いて検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
1)アルツハイマー病(AD)におけるNRDcの病態生理学的意義の解明 当初の計画では、NRDc過剰発現マウス(NRDc-Tg)とアルツハイマー病モデルマウス、NRDc+/-や神経細胞特異的NRDc欠損マウス(NRDc-CKO)とアルツハイマー病モデルマウスとを交配し、Aβ沈着などを検討することによって、アルツハイマー病におけるNRDcの病態生理学的意義を解明する予定であったが、実際はNRDc-Tgとアルツハイマー病モデルマウスの交配に成功し、Aβ沈着量に差があることを見いだした。神経細胞特異的NRDc欠損マウスの作製にあたっては、現在NRDc-floxedマウスの作製中であり、今後Creマウスと交配予定である。 2) NRDcによるAPP切断酵素活性制御の分子機構解明 NRDcがいかなる分子機構をもってADAM及びBACE1によるAPPのシェディングを増強するのかを、細胞実験系を用いて検討した。APP発現細胞において、内因性ADAM10の発現をノックダウンするとAPPのα切断が減少することが知られているが、同細胞で内因性NRDcをノックダウンした際にもAPPのα切断が減少することを新たに見いだした。 3) NRDcのアルツハイマー病におけるバイオマーカーとしての可能性の検討 アルツハイマー病患者検体(血清・髄液)を用いて、NRDcを測定(高感度ELISAはすでに開発し特許申請済み)し病状・予後との関連を検討する予定であったが、検体数が十分に集まらず着手できていない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、遺伝子改変マウスの解析と、細胞を用いた実験を中心としている。 特に、NRDc-Tgマウス、アルツハイマー病モデルマウス、神経特異的Cre-Tgマウス、NRDc-floxedマウスなど、複数ラインのマウスの維持・管理に年間80万円程度必要である。また、遺伝子改変マウスのジェノタイピングのための試薬、免疫染色法やウエスタンブロッティングなどの実験試薬、抗体などを物品費として計上する予定である。 研究成果の発表のため、論文投稿費・印刷費、学会出張費(日本分子生物学会に参加予定)を旅費として計上する予定である。
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Research Products
(4 results)