2013 Fiscal Year Research-status Report
TDP-43による神経変性メカニズムの解明とTDP-43異常蓄積阻害薬の検索
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24700370
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
山下 万貴子 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 主任研究員 (00380668)
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Keywords | 神経変性疾患 / TDP-43 / 神経細胞毒性 |
Research Abstract |
<目的>TDP-43は筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis:ALS) および 前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar d egeneration with ubiquitinated inclusions:FTLD-U)などの神経変性疾患において出現するユビキチン陽性細胞内凝集体の主要構 成成分として同定された。本研究では、TDP-43の部分欠損変異体を導入することにより培養細胞株内においてTDP-43凝集体を形成する細胞モデルを用いて、TDP-43凝集体形成と神経変性の関係について検討した。 <結果・考察>患者脳においてその蓄積が確認されているTDP-43のC末断片と、正常TDP-43について、それぞれ新たにレンチウイルス発現用のコンストラクトを作製し、レンチウイルスを使った細胞モデル系を新たに確立した。このシステムを使ってTDP-43の神経細胞について検討した結果、正常TDP-43を強制発現させるとアポトーシス誘導による著しい細胞毒性が誘導されることを明らかとした。一方で、C末断片を発現させた細胞では、正常TDP-43強制発現ほどの強い毒性ではないが、次第に細胞増殖が抑制されることが明らかとなった。そこで、GFPタグがついた各種TDP-43コンストラクトを使って、詳細を解析した結果、TDP-43凝集体形成細胞では細胞周期の異常は確認されなか ったが、DNA合成がほぼ完全に阻害されていた。また、これらの細胞では遺伝子の転写に関与するRNAポリメラーゼIIやその他いくつか の基本転写因子が凝集体中に巻き込まれている様子が観察され、また実際に、これら転写因子の転写活性が抑制されていることも確認 できた。さらに、患者脳においても細胞モデルと同様に、上記転写因子が封入体中に共局在している様子が観察された。このことより 、TDP-43凝集体形成は細胞増殖の停止あるいは遺伝子転写の抑制を通じて、神経細胞の変性を引き起こしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により、TDP-43あるいはその凝集体形成による神経細胞毒性の誘導メカニズムについて新たな知見を得ることができ た。とくに、凝集体自身の神経細胞毒性を示したことは一つの大きな進歩であったとおもわれる。また、新たにレンチウイルスベクタ ーを使ったシステムを構築し、これによって、これまで検出困難だったTDP-43の毒性をはっきりと視覚化することが出来た。その詳細なメカニズムを解析する上で有用なモデルと考えている。 また、正常TDP-43の強制発現でも神経毒性が誘導され、その毒性はC末断片による毒性とは異なるメカニズムで誘導されることを明らかとした。これは、TDP-43プロテイノパチー患者においてTDP-43発現の上昇が観察される場合があることや、TDP-43トランスジェニックマウスにおいてみられる運動障害との関連性について興味が持たれる。
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Strategy for Future Research Activity |
C末断片についての毒性は検証できたが、もう一方のN末断片については、動物モデルも含めてほとんど検証されていないので、その点について細胞モデルを用いて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
TDP-43のN末発現ウイルス作製の遅れによる、実験の遅れのため。 TDP-43のN末断片が神経細胞に及ぼす影響について検討する。
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Research Products
(2 results)