2013 Fiscal Year Research-status Report
自閉症モデルマウスを用いた自他認識機構の基盤的研究
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24700380
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
玉田 紘太 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (10550957)
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Keywords | 自閉症 / 行動異常 / 自他認識 / アミノ酸 |
Research Abstract |
自閉症はその罹患率が110分の1という非常に高くなっているにも関わらず、その分子メカニズムはほとんどわかっていないのが現状である。本研究では近年作製された、自閉症モデルマウスを用いて社会性欠如の原因となる脳領域および分子を解明することを目的としている。本年度は以下の3点について解析を行った。 1.fMRIを用いて自閉症モデルマウスの安静状態における機能的神経連絡の強度を調べる 2.脳内アミノ酸の網羅的解析により、自閉症モデルマウスにおける異常分子を探索する 3.他のマウスの匂い提示により、自閉症モデルマウスにおける異常脳領域を探索する 1:fMRIを用いて、安静時における自閉症モデルマウスの機能的連絡の強度を解析した結果、自閉症モデルマウスは嗅球から梨状皮質への連絡を含む、いくつかの脳領域において機能的神経連絡が野生型マウスより強い可能性が示唆された。現在、数を増やして再現的な結果を得るべく、追加実験を行っている。2:自閉症モデルマウスにおける異常分子の探索するために、自閉症モデルマウス脳内における網羅的アミノ酸の定量を行った。その結果、自閉症モデルマウスの前皮質においてセリンの有意な減少が認められた。本結果はHPLCによる追試実験でも同様に確認できた。今後、セリンの減少が自他認識に影響するかを調べる予定である。3:自閉症モデルマウスを用いて、自他認識に関与する異常脳領域をc-fosマッピングにより探索した。他のマウスの匂いを提示したとき、不安時に活動が強くなる神経細胞群が自閉症モデルマウスで活性化している可能性が示唆された。現在、数を増やして、データを採取している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により、自閉症モデルマウスにおける異常脳領域の候補がいくつか抽出された。また、自閉症モデルマウスにおける脳内アミノ酸の網羅的解析により異常分子の候補が同定された。さらに安静状態におけるfMRIの解析から、一部の脳領域において神経連絡の強度が上昇していることが示唆された。 以上の様に、研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度に得られた結果を詳細に解析する必要がある。異常脳領域候補に対してはRNA、タンパク質レベルでの解析を推進することで更なる異常分子の探索を行う。また、異常分子の候補として同定されたセリンの自閉症モデルマウス脳内における減少に着目して、この減少を防ぐことで自他認識機構が改善されるかを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は研究室の異動に伴い、実験時間に制約を受けた。これにより予定していた実験のいくつかが遂行不可能となったため、未使用額が生じた。 未使用額については生化学的解析のための消耗品、実験動物としてマウス、また遺伝子発現解析のための試薬等が主として使用される。
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