2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700382
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
多田 敬典 横浜市立大学, 医学部, 助教 (20464993)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | AMPA受容体 / アクチン / 養育環境 |
Research Abstract |
本研究では、幼児期の低養育環境が連鎖するメカニズムを分子レベルから明らかにすることを目的としている。 当該年度は、幼児期の社会的隔離による低養育環境が脳内体性感覚野の一つ、バレル皮質における神経ネットワーク構築への影響を調べた。幼児期に社会的隔離をされたラットでは、通常生後12-14日目に起こるバレル皮質でのヒゲを用いた他ラットとのコミュニケーション経験により生じるAMPA受容体のシナプスへの移行が障害されることを発見し、当該年度に発表した。(多田敬典、他9名(4番目)(2012), J. Clin Invest., 122(7):2690-2701)。 こ の幼児期社会的隔離によるAMPA受容体シナプス移行障害は、ストレスホルモンであるグルココルチコイドの血中濃度増加が起因していることを突き止め、グルココルチコイド受容体の拮抗薬により回復することを示したまた社会的隔離を施したラットでは、ヒゲを用いた体性感覚異常、ヒゲを用いた行動の異常、さらには社会的行動の異常も見られた。 今後、本研究成果で得られたAMPA受容体のシナプス移行障害などを指標とし、社会的隔離による低養育環境で生じる神経ネットワーク構築異常が、世代を超えて連鎖していくのか、分子レベルからの相関関係を明らかにしたい。そのため、世代間低養育行動連鎖動物を作製し、解析を進めていきたい。また低養育環境が連鎖していく上での脳内担当領域を同定し、低養育行動との関連性を深めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに、幼児期の養育環境がどのように脳内神経ネットワークを構築する上でどのような影響を与えるか、分子レベルから解析を行ってきた。 当該年度に論文発表した幼児期社会的隔離によるバレル皮質におけるAMPA受容体シナプス移行障害(多田敬典、他9名(4番目)(2012), J. Clin Invest., 122(7):2690-2701)を始め、他にも幼児期社会的隔離により、アクチン線維脱重合分子コフィリンのリン酸化を介した不活性化によるバレル皮質興奮性神経細胞スパイン内のアクチン繊維の流動性が低下していることを発見してきた(多田敬典、論文投稿準備中)。このように幼児期の低養育環境による脳内神経ネットワーク構築メカニズムへの影響を、分子レベルから評価する指標を複数発見してきており、一定の成果を残した。 しかしながら、本研究で解析する低養育行動連鎖動物は、現在作製途中であり、本格的な解析は始められておらず、当初の研究計画よりやや遅れている。SDラット生後1日目から17日目まで、1日6時間(10:00~16:00)、母親兄弟ラットから隔離を行い、低養育行動を示す母親ラットの作製を試みている。離乳後母親になった社会的隔離を受けたラットの養育行動評価を行い、低養育行動を示す母親ラットの効率的な抽出を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、生後1日目から17日目まで社会的隔離されたラットが低養育行動を示す母親となり、さらにその子供も母親ラットになったときに、同様な低養育行動を示すか低養育行動連鎖動物の作製を確立させる。 低養育行動連鎖の作製確立を上げるため、他系統の動物を用いての作成も同時に試みる予定である。ストレスの感受性にはラットの系統によって様々であることから、顕著な差を抽出するためにSDラット以外に、Fischer, Wisterなどの様々な系統のラットを用いて行う。 低養育行動連鎖の作製が確立され次第、現在までに発見した低養育行動により影響を受けるバレル皮質神経ネットワーク構築因子であるAMPA受容体シナプス移行、コフィリンを介したアクチン繊維流動性を指標に、分子レベルからの連鎖性の存在を検討していく予定である。 またバレル皮質以外にもラット養育中枢と考えられている海馬、視床下部内側視索前野(MPOA)、扁桃体中心核(CeA)でも同様な解析を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に抗体等を購入する予定であったが、研究計画上まだ購入の必要性がなかったため、購入を控えたことにより当該繰越金が発生した。次年度は、ストレス感受性の差があるさまざまな系統のラットを用いて、低養育行動連鎖動物の作製確立を試みる。このため、次年度使用額を動物購入費として費やす予定である。
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Research Products
(6 results)