2012 Fiscal Year Research-status Report
TALENsを用いた新規かつ効率的ノックアウトラット作製法の開発
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24700427
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金子 武人 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30332878)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ラット / 遺伝子改変 / 人工ヌクレアーゼ / 実験動物 |
Research Abstract |
本研究は、人工ヌクレアーゼTranscription Activator-Like Effector Nucleases(TALENs)を用いた新規かつ効率的な遺伝子改変ラット作製法の確立を目指すものである。本年度は、TALENsをラット胚に導入することで遺伝子改変ラットの作製の可能性について評価した。 具体的には、チロシナーゼ遺伝子を標的遺伝子としたTALENsプラスミドを作製した。チロシナーゼは、細胞内のチロシンを酸化させる酵素であり、チロシンを酸化させることによりメラニンやその他の色素を合成する。このため、TALENsが胚内で機能しチロシナーゼ遺伝子がノックアウトされると毛色が白色(アルビノ)になる。このプラスミドから人工的にmRNAを合成した。過排卵処理を施したDA系統雌を成熟した同系統雄と交配し、前核期胚を採取した。TALENs mRNAを前核期胚に導入し、生存胚を偽妊娠雌の卵管に移植した。その後、得られた産子を解析することにより遺伝子変異効率を算出した。 TALENsを導入した胚から得られた産子を解析した結果、遺伝子変異の見られる個体を得ることはできなかった。そこでTALENsと共にエキソヌクレアーゼ1(Exo1)遺伝子のmRNAの導入を試みた。その結果、得られた産子の25%に遺伝子変異が認められた。また、アグーチ色のDA系統の毛色がアルビノに変化した個体の作出にも成功した。さらに、F344系統においてもTALENsの導入により遺伝子変異の見られる個体の作出に成功した。 本年度の研究成果より、TALENsはラット胚内で機能することが明らかとなり、Exo1の共導入により遺伝子変異効率を有意に向上させることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果より、TALENsを用いたノックアウトラットの作製に成功したことから、達成度は「おおむね順調に進展している」と評価する。遺伝子改変ラット作製技術については開発されているものの、TALENsを用いた遺伝子改変ラット作製およびラット胚でのTALENsの機能についての報告はほとんどない。このため本研究で、TALENsを用いて遺伝子改変ラットの作製に成功した成果は極めて大きい。本研究成果では、TALENsのみのラット胚への導入では、遺伝子変異の見られる産子を得ることはできなかった。しかしながら、Exo1の共導入により遺伝子変異効率を有意に向上させることができた。さらに、DA系統、F344系統と複数の系統において遺伝子改変ラットの作製に成功した。ことこのことから、次年度はこのプロトコールの詳細な検討により、効率的な遺伝子改変ラット作製法の検討を遂行できるものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果より、複数の系統においてTALENsを用いたノックアウトラットの作製に成功した。このことから、次年度は計画通り、効率的な遺伝子改変ラット作製法の開発を目的としたTALENsのラット胚への導入条件の詳細な検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究に必要な設備・備品については、京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設に整備されており、これらを本研究に使用する。本研究に申請する経費のほとんどが実験用動物(ラット)、消耗品および動物飼育経費である。また、本研究により得られた成果の報告を学会等で積極的に行い、本研究最終年度においては研究成果を科学雑誌に投稿する予定であるため、旅費および研究成果投稿料として使用する。
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Research Products
(10 results)