2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24700429
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野 慎子 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員 (30626437)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | C型肝炎ウイルス / 感染症 / 癌 / マウスモデル |
Research Abstract |
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により惹起される慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌の発症機構の解析には、小型実験動物モデルの開発が必須である。しかしながら、未だマウス個体はもとより、マウス由来の細胞でHCVの実験室株であるJFH-1株(HCVcc)を効率よく感染増殖させた報告はない。本研究は、受容体候補分子とHCV ゲノムの翻訳複製を亢進する肝臓特異的なmicroRNAであるmiR-122を不死化マウス肝臓細胞に強制発現させて、HCVに感受性を示すマウス肝臓細胞株の樹立を目的とした。 まず、初代マウス肝細胞をSV40 T抗原あるいはE6/E7とhTERTで不死化し、HCVの感染受容体候補分子(hCD81, hSR-B1, hCLDN-1, hOCLN)とmiR-122をレンチウイルスベクターで過剰発現させた。これらの細胞株にHCVccを接種し、ウイルスゲノムの複製とウイルス蛋白質の発現を検討した。その結果、SV40 T抗原よりもE6/E7とhTERTで不死化した細胞の方が、アポリポ蛋白質や肝臓特異的マーカー遺伝子の発現等の肝機能が保持されていたが、いずれの方法でもmiR-122の発現量は大きく減少した。そこで、後者の方法で得たマウス不死化肝細胞にmiR-122を過剰に発現させることによりJFH-1株のレプリコン細胞を樹立したが、レプリコンRNAの配列解析から、マウス特異的な適応変異は認められなかった。 次に、抗HCV薬によりHCV RNAを除去したcured細胞に対して、マルチシストロニックなレンチウイルスを用いて一つのウイルスベクターで4つの感染受容体候補分子を同時に過剰発現させると、HCVのエンベロープタンパク質を持つシュードタイプウイルスの侵入が可能であった。さらにHCVccを接種したところ、HCVのゲノム複製とウイルスタンパク質の発現を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、マルチシストロニックなレンチウイルスを用いて、一つのウイルスベクターで4つの感染受容体候補分子を同時に過剰発現させるシステムを構築できたことが挙げられる。これにより、複数のウイルスベクターを用いる既報と比べ、非常に効率良くHCV侵入を許容する細胞株を樹立することが可能となった。 また、薬剤耐性遺伝子を発現する組換えHCVを用いて感染を許容する細胞のスクリーニング法を樹立した。これまでにHCVに感受性を示すマウス培養細胞を樹立したが、ゲノム複製量が非常に低く、低感受性であった。その原因として、ウイルスタンパク質の発現を指標にHCVcc感染細胞を免疫染色により検出したところ、感染受容体候補因子を発現するマウスのcured細胞間でHCVccの感受性が大きく異なっていた点が挙げられる。感染受容体の導入はウイルスベクターを用いて行っているため、その挿入部位によって発現制御が異なると予想されるので、HCVccに高感受性を示すマウス肝細胞株の樹立には、このような工夫を加えた選抜方法が、非常に有用となると考えられる。 また複製が妨げられる原因の一つとして、マウスとヒトでの自然免疫応答の違いが示唆されており、インターフェロン発現を誘導する転写因子IRF3を欠損したマウス由来繊維芽細胞(MEF)でのHCV RNA複製能が上昇するという報告がある(Lin et al., 2010)。申請者はマウス由来肝臓細胞においても同様であることを確認しており、現在までにIRF3欠損マウス由来肝臓由来の不死化肝細胞を樹立した。
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Strategy for Future Research Activity |
IRF3欠損マウス由来肝細胞でこれまでと同様の手法で樹立したcured細胞に対してHCV感染受容体候補分子を強制発現させ、HCVccを感染させる。またその際、より高感受性のクローンを選択する目的で、薬剤耐性遺伝子を発現する組換えHCV、あるいは生細胞を標識できるRNA検出プローブを用いて、HCV感染を許容する細胞のスクリーニングを行う。その後、HCV RNAを除去した細胞を高感受性株として用いる。 そして僅かでも粒子産生が認められた場合にはマウス肝細胞、あるいはガン細胞由来の培養細胞よりも生体内の肝細胞に近い性状を示すinduced hepatocyte-like(iHep)細胞(Sekiya et al., 2011)を用いて、さらなる馴化を行う。iHep細胞とは、マウスの未分化あるいは分化した細胞に対して特定の転写因子を発現させることにより、in vitroで肝細胞へと分化させたものである。この細胞は「肝臓らしさ」を保ったまま増殖し、初代肝細胞と異なり継代培養が可能であることから、レセプターや複製に必須な宿主因子の強制発現により、HCV感染・増殖を成立させることができると十分に期待される。つまり、iHep細胞で効率よく増殖可能なHCV株を分離することで、よりin vivoの肝臓に近い条件で適応変異を挿入できると考えられる。そしてマウスに馴化したHCVゲノムにどのような変異が導入されているのかを解析するとともに、それらの変異を挿入したJFH-1株のHCV RNAをin vitro transcriptionにより合成してマウス由来肝細胞へ導入し、in vitroでの培養が可能なマウス馴化HCVが得られたか否かを検証する。また、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)