2012 Fiscal Year Research-status Report
断続的なレム断眠ストレスに起因した注意欠陥/多動性障害動物モデルの確立と病態解明
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24700433
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
八百板 富紀枝 東北薬科大学, 薬学部, 助教 (00382672)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ADHD / 断眠 / 注意欠陥/多動性障害 / 交替率 / 不注意 / レム睡眠 |
Research Abstract |
注意欠陥/多動性障害(ADHD)は、不注意、多動および衝動性を主症状とし、そのうち、不注意症状はY字迷路を用いた交替率の測定によって評価される。一方、ADHD患者においては、レム睡眠時間および総睡眠時間が短縮しているという報告がある。これらの背景から、マウスに断続的なレム断眠ストレスを負荷することにより交替率が低下するか否か、すなわち不注意症状が発現するか否かについて検討を行った。実験には、対照群として、通常のケージで飼育を行った群(ノーマル群)と水槽環境下ではあるがプラットホームの面積が広く、眠ることが可能な群(水槽対照群)を設けた。その結果、断続的なレム断眠ストレス群(断眠群)において、負荷日数に依存した交替率の低下が認められた。さらに、この交替率の低下はノーマル群のみならず水槽対照群との比較においても有意な低下が認められた。以上のことから、睡眠時間の短縮が不注意症状の発現に関与することが明らかとなった。一方、Y字迷路を用いた交替率の低下と海馬における一酸化窒素代謝物(NOx)産生の関連性が示唆されていることから、断眠群のマウスの海馬におけるNOx濃度を、高速液体クロマトグラフ法により測定した。その結果、交替率の低下に伴い、海馬のNOx 濃度が低下することを見出した。これらは、ADHDの治療薬であるメチルフェニデート(MPD)の投与により有意に改善されることから、MPDによる不注意症状の改善には、海馬一酸化窒素(NO)系が関与することが明らかとなった。以上をまとめると、本実験系は、ADHDにおける不注意症状を反映した病態動物モデルとなり得る可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示した通り、マウスへの断続的なレム断眠ストレス負荷によるADHD病態動物モデル作製の一環において、不注意症状に着目した検討については行動薬理学的な観点からも順調に進展している。しかし、ADHD症状のうち、衝動性の検討についてはあまり進展していない。一方、不注意症状の発現には、海馬一酸化窒素系の障害が関与する可能性を明らかにすることができたので、ADHDの病態発現メカニズムの解明の観点からも概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に進展している不注意症状の発現メカニズムについて詳細な検討を行う。すなわち、海馬一酸化窒素系の障害に関して、海馬一酸化窒素合成酵素の発現などを検討することを予定している。これと同時に、メチルフェニデートによる不注意症状の改善のメカニズムについても、海馬一酸化窒素系を主眼において検討する予定である。一方、ADHD症状のうち、衝動性症状については、高架式十字迷路試験を行い、マウスへの断続的なレム断眠ストレス負荷による行動変化が、衝動性症状を示すか否かを明らかにし、その発現メカニズムについても検討していく予定である。今後、本研究により得られた成果の公開を目的に、学会発表ならびに関連学術雑誌への論文投稿を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
不注意症状の検討が順調に進展したため、今後、衝動性症状の検討を優先して進める。そのため、24年度に購入予定であったビデオ行動解析ソフトウェア(室町機械・ANY-maze)を購入し、高架式十字迷路におけるオープンアーム滞在時間を評価し、衝動性症状についての検討を行う。その他は、動物、試薬、消耗品の購入、成果発表のための英文校正ならびに学会出張旅費のために使用する予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Presentation] Effect of methylphenidate on L-NAME-induced behavioral impairment in Y-maze task in mice2013
Author(s)
Fukie Yaoita, Yuka Nagasawa, Takayuki Saito, Kaori Arai, Asaka Shitamichi, Masahiro Tsuchiya, Wataru Nemoto, Osamu Nakagawasai, Yuichiro Arai, Takeshi Tadano, Koichi Tan-No
Organizer
第86回日本薬理学会年会
Place of Presentation
福岡
Year and Date
20130321-20130323