2013 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア酸化障害による酸化ストレス関連疾患の発症・悪化機序の解明
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24700434
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
坂井 隆浩 高崎健康福祉大学, 薬学部, 助教 (10418618)
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Keywords | 酸化ストレス / ミトコンドリア / ヒドロキシラジカル / 抗酸化剤 / 活性酸素 |
Research Abstract |
酸化ストレスは、細胞内における活性酸素種(ROS)の生成と消去のバランスが崩れ、ROSが過剰産生することによって生じる。ROSによって酸化障害された細胞は機能不全を引き起こし、様々な疾患の発症・悪化に関与すると考えられている。生体内の90%以上のROSは、ミトコンドリアの電子伝達系において、酸化的リン酸化によるATP産生過程で生じる。ミトコンドリアで生成されるROSの中でも・OHは酸化力が最も強力である。このことから、・OHがミトコンドリアの酸化障害に多大な影響を及ぼすと考えられるが、未だに不明瞭な点が多い。本研究では、ミトコンドリアの・OHを選択的に消去する抗酸化剤を開発し、これを種々の酸化ストレス関連疾患モデルマウスに用いることにより、・OHによるミトコンドリア酸化障害が疾患に及ぼす影響を明らかにすることを目的にしている。 これまでに、ミトコンドリアROS誘導細胞に、ミトコンドリア・OH標的抗酸化剤を用いてミトコンドリア・OHが酸化ストレスに及ぼす影響を調べた結果、ミトコンドリア・OHはミトコンドリアの酸化に多大な影響を及ぼし酸化ストレスを引き起こすこと、さらに酸化障害を受けたミトコンドリアは、ミトコンドリア品質管理機構により排除されることが明らかになってきた。現在、種々の酸化ストレス関連疾患モデルマウスを用い、ミトコンドリア・OHが疾患に及ぼす影響を分子レベルの解析による解明を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに、ミトコンドリアROS誘導細胞を材料に、新規ミトコンドリア・OH標的抗酸化剤に用いた検討から、・OHがミトコンドリアの脂質成分であるミトコンドリア膜の酸化に多大な影響を及ぼすこと、ミトコンドリアの挙動解析から・OHによってミトコンドリア膜の酸化がミトコンドリアの断片化を引き起こすことが明らかになった。さらに分子レベルの解析においても、ミトコンドリア膜の融合を制御するOPA1の発現パターンが異常を示し、融合不全が引き起こされることが明らかになり、これに加えマイトファジーが誘導され断片化ミトコンドリアが排除されることが明らかになった。 本年度は、新規ミトコンドリア・OH標的抗酸化剤を種々の酸化ストレス関連疾患モデルマウスに用いて、・OHによる酸化ストレスが種々の酸化ストレス関連疾患に及ぼす影響を調べた。これまでの研究成果から、酸化ストレス関連疾患モデルマウスでは、新規ミトコンドリア・OH標的抗酸化剤によってミトコンドリア・OHを抑制すると酸化ストレスの亢進が抑制され、これらの影響を受ける分子についても明らかになりつつある。その一方で、いくつかの酸化ストレス関連疾患モデルマウスでは、ミトコンドリア・OHを抑制しても酸化ストレスの亢進を抑制できないことが明らかになってきた。これらの臓器におけるROS産生源を調べた結果、細胞膜に局在するNADPHオキシダーゼで産生されるROSに起因することが明らかになった。このことから、新たに細胞質・OH標的抗酸化剤を開発し、細胞質・OHが酸化ストレスにどのように関与しているのか研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリア・OHだけでなく細胞質・OHにも着目して研究を推進する。これまでに、酸化ストレス可視化マウスを用い、細胞質・OHが亢進している臓器を明らかにした。今後は、細胞質・OHによる酸化ストレスが疾患の発症・悪化に対して、どのような影響を及ぼすのか、これらの臓器の網羅的な遺伝子発現解析を行う。これにより、・OHによって発現変動を及ぼす遺伝子の発現プロファイルを作製し、遺伝子オントロジー解析から、・OHのよって引き起こされた酸化ストレスが、分子レベルで生体にどのような影響を及ぼすのか明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に解析予定だった酸化ストレス可視化トランスジェニックマウスの導入が遅れた。さらに、このマウスと疾患モデルマウスを交配させ作出する酸化ストレス可視化疾患モデルマウスの繁殖状況が著しく悪く、これらを用いたin vivoイメージングによる解析が、当初の予定よりも大幅に遅れた。そのため、昨年度予定していた網羅的な遺伝子発現解析を今年度行うため、次年度使用額が生じた。 網羅的な遺伝子発現解析を行うための試薬、これに関係する消耗品などの費用を計上する。さらに、より詳細な分子レベルの解析を行うための試薬、消耗品等の費用を計上する。また、研究成果の発表ならびに情報収集を行うための学会や研究会等の参加に関する費用を計上する。
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