2012 Fiscal Year Research-status Report
SLE様から強皮症様へ症状がスイッチするGVH病動物モデルのメカニズム解析
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24700438
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小川 修平 東京理科大学, 生命医科学研究所, 助教 (20385553)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 疾患モデル / GVH病動物モデル / 全身性強皮症動物モデル / 補助シグナル / CD28 |
Research Abstract |
骨髄移植の副作用として移植片対宿主(GVH)病が最も懸念される。免疫抑制剤などの改良により急性GVH病はかなり抑制できるようになっている。しかし、慢性GVH病の発症頻度は大きく改善されておらず、その症状も様々である。我々はこれまでホストの環境がGVH病の症状に及ぼす影響を検討し、その結果、T細胞の活性化に重要なCD28補助シグナルが伝達されないマウス(B6.CD28TM-Tg)をホストとして慢性GVH病モデルに使用したところ、症状が全身性エリテマトーデス(SLE)様から強皮症(SCL)様へスイッチすることを見つけた。本研究では、「スイッチした症状の正確な把握」、「エフェクターT細胞の機能」、「症状変化における補助シグナルの役割」、「制御性T細胞の分布や機能」、を明らかにすること、この疾患モデルにおけるT細胞の活性化を可視化することを目標として研究を推進してきた。 本年度は研究計画に沿って、GVH誘導マウスの組織状態の検証を行い、B6.CD28TM-Tgホスト群では、皮膚のみならず消化器系臓器の上皮、肝臓など実質臓器においてもコラーゲンが沈着・蓄積し線維化が進行していることが明らかとなった。野生型B6ホスト群では、DNAに対する抗体(自己抗体)の産生とこれら複合体の腎臓への沈着が見られたが、CD28TM-Tgホスト群は自己抗体の産生は低い一方で、腎臓にはIgG1クラスのみの免疫複合体の沈着が見られた。ドナーCD4+T細胞のサイトカイン産生パターンを調べたところ、B6ホスト群と比較しCD28TM-Tgホスト群ではIL-4産生細胞の割合が高く、その一部は同時にIFN-γも産生していた。誘導時にCD28補助シグナルを阻害するCTLA4-Igを投与したところ、部分的にはSCL様症状の発症が抑制できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間内に明らかにすることとして、(1) GVH病誘導マウスの状況把握、(2) 症状がSLE様からSCL様へスイッチした原因の究明 (3) T細胞の活性化をlive imagingで検出可能なツールの作製、を行うこととした。本年度は、(1)について、様々な組織標本を作製し、コラーゲンや免疫グロブリン複合体の沈着などを検討した。また、抗体が全く産生されないRAG2KOマウスの組織切片を作製し、SLE様、SCL様それぞれの症状を呈しているマウスより回収した血清で染色したところ、染色パターンが異なった。従って、ホスト環境の違いにより標的抗原がシフトしていることが示唆された。(2)については、B6.CD28TM-TgにB6由来の細胞を移入しGVH病を誘導することでSCL様症状の発症に関与する細胞サブセットを検討した。その結果、B6の脾臓細胞を戻すことによってSCL様症状 の誘導が抑制できること、CD4+T細胞のうちCD25+細胞を除去して移入した場合のみSCL様症状が抑制されないことが明らかとなった。また、ドナーCD4+T細胞のサイトカイン産生を調べた結果、CD28TM-Tgホスト群ではB6ホスト群と比較しIL-4産生細胞の割合が高いことが明らかとなった。これらの結果から、ホスト内のCD4+CD25+細胞の有無や機能、及びドナーT細胞の分化や増殖が症状の変化に関与している可能性が明らかになりつつある。(3)については、松田道行教授(京都大学大学院 生命科学研究科)がERKの一分子FRETプローブトランスジェニックマウスの作製に成功し、その成果が2012年に報告された。今後共同研究を行い、ホスト環境の違いがドナーCD4+T細胞の活性化にどのような影響を及ぼすのかを検討する。 以上、本年度に予定していた実験は進行しており、おおむね目標は達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、SLE様症状からSCL様症状へのスイッチには、ホストマウスのCD4+CD25+T細胞の割合や機能が関与していることが明らかになってきている。活性化していないCD4+T細胞のうちCD25+T細胞の多くは制御性T細胞と して知られている。そこで、制御性T細胞のマーカーとして知られているFoxp3の発現制御下でGFPを発現するマウスを使用し、CD28TM-Tgホスト群における制御性T細胞の分布を検討する。また、申請者の研究室ではCD28TM-Tg以外にCD28の細胞内領域に点変異を持つ変異CD28を発現するマウスを有している。これらのマウスの中に、制御性T細胞の割合が野生型マウスの半分程度のマウスがいる。このマウスを用いてGVH病の症状の推移を検討する。その他、関節リウマチの治療薬としても認可されているT細胞の活性化に重要なCD28補助シグナルを阻害するCTLA4-Igを投与すると、SCL様症状は部分的に抑制されるが、ドナーT細胞の分化や増殖を検討する。さらに、これまでの実験から、CD28TM-Tgホスト群ではドナーCD4+T細胞の中のIL-4産生細胞の割合が高いことが明らかとなってきており、IL-4に対する抗体でIL-4を中和した場合に症状が抑制できるかを検討する。松田道行教授(京都大学大学院 生命科学研究科)との共同研究によりERKの一分子FRETトランスジェニックマウスをドナーあるいはホストに用い、ドナーおよびホストT細胞の活性化をin vivoでモニタリングし、症状との関係を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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