2012 Fiscal Year Research-status Report
遺伝学的モニタリングのための超迅速マウス遺伝子プロファイリングシステムの開発
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24700441
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
三浦 郁生 独立行政法人理化学研究所, マウス表現型解析開発チーム, 開発技師 (70624948)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝学 / 育種学 / ゲノム / SNPsマーカー |
Research Abstract |
対象遺伝子の機能を解明する有効な手段として遺伝子改変マウスが開発されるが、遺伝背景の統御が不十分な場合、その正確な解析に影響する可能性がある。遺伝背景のモニタリングは非常に労力と費用を要する側面があるので、効率的に遺伝背景の均一性を検出可能な、TaqManアッセイベースの遺伝子プロファイリングシステムを構築することを目的とした。まずシステム開発の中で重要な、マーカーのセレクションを行った。設計済みの約800のTaqManプローブから実験・野生由来近交系の33系統のSNPsアレルパターンの調査を行うと共に、公共データベース上のSNPs情報やベクター由来導入遺伝子から新規マーカーを見出し、TaqManプローブの設計及び評価を行った結果、約300マーカーを選抜した。これらはB6系統へのゲノムワイドな遺伝背景均一性を検出するB6特異的SNPsや、より詳細な検査のB6亜系統・生産ブリーダー間のSNPs、父系・母系の由来系統検出のY染色体・ミトコンドリアDNA上のSNPs、遺伝子改変系統作製時に使用されるベクター由来導入遺伝子を検出するマーカーで構成されている。このような遺伝背景の検出対象別のマーカー選抜は、マーカー数の抑制と詳細な検査を両立させ、コストや労力の低減に効果的であり非常に意義深い。TaqManプローブの384プレートでの凍結乾燥保存法を検討したが、解析直前に実施する方が蛍光強度は安定かつ強かったため、プローブを予めプレートに分注し、シーリング・遮光した上で冷凍し、解析直前に凍結乾燥を実施する系に改めた。データ解析は、機器より出力されるデータからTaqMan Genotyper Software(Applied biosystems)を用いてマーカー単位で正確に判定。これら結果を表形式のパネルに変換するツール開発を行い、スムーズな遺伝背景検出を可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本システムで検出するマーカーセットは、使用するプレートのウェル数に相当する384マーカーを予定しているが、現在までに選抜したマーカーは、目標数に至っていない。しかしながら、全体的な実験の流れの把握や、システム上の問題点を検証する目的で、384マーカーの半分の192マーカーでのシステム構築を行った。本システムは、検出する遺伝背景の検出対象別にマーカーを選抜することで、マーカー数の抑制と同時に高い検出能を両立させるものであるが、ハーフサイズの192マーカーの選抜に於いても、検出する遺伝背景の対象群は変更せず、各群のマーカー数をサイズダウンするような選抜を行った。このように構築された192マーカーセットのシステムを用いて、日本マウスクリニック事業における遺伝子改変マウス系統の遺伝背景チェックを行ったところ、コンジェニック化によるゲノム全体の均一化の進行度の評価やY染色体の戻し交配系統への置換、B6/JとB6/Nの亜系統の混在による系統維持などの検出に効果的であり、少ないマーカーサイズにおいても、本システムがコンジェニック化や遺伝学的モニタリングといったマウス系統の遺伝背景の統御をモニターするのに有効であることが検証できた。つまり、今後384マーカーへサイズアップすれば、より詳細な遺伝背景検出が可能となり、より精度の高い検出システムが開発できることを示唆している。したがって、マーカー選抜がやや遅れているが、全体的なシステムの流れを構築しその運用における有効性の確認が済んでいるため、研究全体としては順調に進行していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、遺伝子プロファイリングシステムの枠組みは192マーカーの系で構築ができているため、今後は384マーカーへシステムをサイズアップするための、新規マーカーの探索、及びそのTaqManプローブセットの設計とバリデーションを行う予定である。現在までに300弱のマーカーを選抜済みである。残りのマーカー開発を行っていきたい。特にB6/Nの生産ブリーダー間レベルでのSNPsマーカーが多く見出されてきているので、これらを積極的にマーカーセットに組み込んでいくとともに、特定のマウス系統が特徴的にもつSNPsマーカーを加えることによって、より多くの系統の遺伝背景への関与を網羅的に検出することが可能になると考えられる。最終的に選抜した384マーカーでの遺伝子プロファイリング結果は、個体単位での表形式のパネルで示される見込みである。遺伝背景の均一度やY染色体の置換についてなどの個体ごとの遺伝子プロファイルリング情報を、その表から簡単に読み取ることが可能になるように、どのような情報を表示し、またそのフォーマットをどのようにすべきかを検討していきたい。そして日本マウスクリニック事業における遺伝子改変マウス系統の遺伝背景の検出を通して、システムの有効性を実証していくとともに、ホームページや学会発表を通して開発したシステムの紹介や、マウス研究における遺伝背景統御の重要性について周知していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)