Research Abstract |
赤外分光を用いて分化誘導条件下における骨系細胞の動的過程を評価するため,赤外分光装置の試料室内に骨系細胞の培養環境,および,観察系を設計・構築した。本研究では,骨系細胞の分化誘導条件として低酸素条件下での細胞培養を検討することから,細胞培養セル内への窒素ガス及び炭酸ガスの導入と灌流培養により,培養セル内部の低酸素培養条件と,赤外分光観察にともなう試料室内の乾燥空気(パージエア)環境を両立しうる観察系を考案した。また,試料室内に観察系を設置した状態での長期培養,および,細胞培養セル内の骨系細胞に分化誘導プロトコルを適用するため,灌流培養系の改良をおこなった。設計・構築した観察系は,細胞培養装置における低酸素培養環境との比較検討を含めて,実験系の妥当性についてのさらなる検討が必要である。 このほか,灌流培養による同様の観察系を用いた,脂肪細胞分化にともなう細胞内組成の経時的変化について測定した研究成果について,学術雑誌にて報告(Sens Actuators B Chem, Vol. 167, (2013)pp. 1176-1182)するとともに,国際学会で口頭発表した。当該研究成果においては,脂肪細胞分化の経時的計測において,脂肪生成に由来する赤外吸収スペクトルピーク強度の増加が,光学顕微鏡観察により認められる脂肪滴形成よりも早く検出された結果について報告している。このことは,赤外分光を用いた非標識非侵襲計測法が,細胞の動的過程にともなう形態変化に先行する細胞内組成の変化を計測しうる有用な手法であることを示している。
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