2012 Fiscal Year Research-status Report
視覚機能の神経生理学的検討に基づくストレス評価法の高精度化
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24700451
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
飯島 淳彦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00377186)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 自律神経系 / 瞳孔反応 / サーカディアンリズム / 視覚機能 / ストレス反応 |
Research Abstract |
現代社会を生きる上で大きく問題となるストレス反応を神経生理学的なメカニズムに基づき計測し,定量的に評価する研究を進めている.ストレス反応は外的,内的なストレッサーが要因となって生体にもたらされる生理学的な反応である.特に自律神経系に大きな影響を与え,いわゆる不定愁訴として症状が現れることが多い.本研究では,視覚機能とストレス状態,さらには人の心的状態の関係を精査しストレスの評価方法の精度を向上させるのが目的である.特に慢性ストレスの影響が見込まれる(1)自律神経系,(2)サーカディアンリズムに注目して,神経生理学的にストレス反応と1,2との関係を明らかにすることが研究全体の目標である. 本年度は,ストレス反応と自律神経系の関係を,瞳孔反応・循環系などを用いて評価を行なう準備をし,評価実験を行なった.特に注目しているメラノプシン網膜神経節細胞(mRGC)に影響のある光の成分を定量し,それらと生体反応の関係性を分析した.先行研究で用いた視覚刺激の分光放射輝度を計測し,mRGCに影響のある波長帯域のパワーと瞳孔反応との関係を見出した.この実験は研究協力者の辻村誠一博士(鹿児島大)の協力のもとで実施した.次に,サーカディアンリズムと瞳孔反応,特にmRGCに関係のある光成分による瞳孔反応がリズムとどのような関係にあるのか,実験を行なった.被験者は毎時の瞳孔径計測とともに検温を行い,体温変動のリズムと,瞳孔反応のリズムとの関係を調べた.その結果,mRGCの影響を与える帯域の光刺激とそうでない光刺激とでは,体温リズムとの同期性が異なる興味深いデータが得られた.これにより,刺激光を精密に調整することで,自律神経系のバランスと生体リズムを簡単に評価する方法が確立できそうである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験は順調に進んでいるが,研究を進める順序を当初予定から変更した.当初計画では25年度に予定していた自然画像の分析を本年度に前倒しした.24年度開発を予定していた研究協力者の刺激装置を,従来法の積分球方式からDLPプロジェクター方式に一新する関係で開発期間が延長されたためである.従って,システム開発を25年度の課題とし,本年度はそれ以外の実験を先行させた.本年度に自然画像の分析による瞳孔反応の解析と,サーカディアンリズムの実験に着手したことから,それらに関する新たな知見を得ることができ,また,これらは25年度に実施予定だったものであるので,全体として計画に大きな遅れは生じていない.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,mRGC刺激装置の開発を終え,それらを用いたMRI計測実験を行なう.また,一部は本年度にデータ収録を行ない分析を進めた動物の瞳孔反応のデータ蓄積と解析を行なう. 精密な光刺激実験により,サーカディアンリズムの抽出を行なう.心的に揺さぶりをかけたタスクを実施しその際の瞳孔反応も精密な光刺激装置で行い,ストレス反応の評価の高精度化の方法をまとめる. 具体的方法は以下の通りである.ストレス状態ではmRGC の反応が大きく変化するのでは,という仮説検証のため,mRGC の至適刺激光を用いて,ストレス状態を評価する.評価は,被験者に軽く心理的揺さぶりをかけることができる5 分間 の映像視聴を行い,その視聴前後に多原色刺激の瞳孔反応を測定する.前後の瞳孔反応から被験者の瞳孔反応量を算出し,被験者の唾液中α-アミラーゼ量など自律神経系の指標との関係を得る. mRGC は視交叉上核に投射していることは既に報告されている.また,外側膝状体を経て形態視への貢献があるとの報告もあるが,正確にその投射先全てが解明されているわけではない.そこで,構築したmRGC 刺激によって活動する脳部位がどこなのかfMRI において検証する.fMRI のスキャンは共同研究を進めている西新潟中央病院脳外科の村上博淳博士と放射線科の協力で行う.当該施設でのスキャンのは,申請者の行う別プロジェ クトにおいて既に開始している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
mRGC刺激装置開発に物品費を投入する.また,研究最終年度にあたり,データ分析やまとめ作業のために研究補佐員を雇用し人件費を支出する.また成果発表(国内1回,国外1回の予定)の旅費を支出する.研究協力者と共同実験を実施する機会を設け,現地への研究代表者の旅費,研究協力者が代表者の施設に出張する旅費も支出予定である. その他,実験施設の使用量,動物実験用の動物の飼育や体調管理のための飼料,薬物,検査費等も支出し,経費を有効かつ適正に利用する.
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