2013 Fiscal Year Research-status Report
マルチターゲット脂質プロファイリングによる大腸がんの早期診断バイオマーカ―探索
Project/Area Number |
24700455
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
和泉 自泰 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70622166)
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Keywords | リピドミクス / メタボローム解析 / 大腸がん / 慢性炎症 / バイオマーカー探索 |
Research Abstract |
脂質は、多くの分子種が存在し、様々な重要な生理機能を果たしているが、個々の分子種とがんの発症機構との関連性はまだよく分かっていない。そこで本研究では、質量分析計を用いたマルチターゲット脂質プリファイリング法により、大腸がんの発症により変動する脂質分子種を見出すことを目的とする。平成25年度では、昨年度の炎症性腸疾患モデルであるIL-10遺伝子欠損マウスを用いた網羅的脂質分子種のプロファイル結果を踏まえ、新たに、脂質メディエーターの分析系構築を行った。一般的に炎症性作用を示すアラキドン酸(AA)カスケードのプロスタグランディンやロイコトリエン、トロンボキサンなどのω-6脂質メディエーター、および、ドコサヘキサエン酸(DHA)由来の抗炎症性作用を示すプロテクチンなどのω-3脂質メディエーターを測定対象とした。脂質メディエーターは微量生理活性物質であることから、試料の前処理方法の最適化および分析系の高感度化が必要であった。そこで固相抽出精製、および、LC/MS/MSシステムへの大量導入法を確立することで微量な組織(脳・肝臓・小腸・大腸)や体液中(ヒト血清)からの網羅的脂質メディエーター分析を達成した。続いて、10週齢の野生型およびIL-10遺伝子欠損マウスの腹水および大腸組織の脂質メディエーターの分析を実施した。その結果、IL-10遺伝子欠損マウスは野生型マウスと比べて炎症性作用を示すプロスタグランジンD2が大腸組織において統計学的に有意に上昇(2.8倍)していることが示された。また、抗炎症作用を示すプロテクチンD1においても、IL-10遺伝子欠損マウスは野生型マウスよりも産生量が1.5倍程度上昇した。しかしながら,プロテクチンD1の内生量はプロスタグランジンD2と比べて100分の1程度であり、さらに、プロテクチンD1の上昇率はプロスタグランジンD2よりも低値を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では、不飽和脂肪酸から生合成される生理活性代謝物、脂質メディエーター類の包括的分析手法を確立し、昨年度に引き続きIL-10遺伝子欠損マウスの代謝解析を行った。その結果、慢性炎症時には、炎症性作用を示すプロスタグランジンD2と抗炎症性作用を示すプロテクチンD1生産量のアンバランスが顕著に生じており、昨年度IL-10遺伝子欠損マウスの代謝解析により見出したDHA関連脂質分子の変動との関連性が明らかとなった。 また、今年度は大腸がん患者血清のリピドーム解析にも着手した。予備試験のデータ解析を行ったところ、健常者と比べていくつかの脂質分子種において有意な変動を示した。最終年度においては、大腸がん患者血清の検体数を増やし、感度、確度の高い脂質バイオマーカーの探索を実施する予定である。 以上のことから、実験計画の進歩状況としては、「おおむね順調に進展している」と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では、「大腸発がんモデルAPCmin/+マウスを用いたマルチターゲット脂質プロファイリング」および「ヒト大腸がん患者の脂質メタボローム解析」を実施する。そして、モデル実験動物の結果とヒト臨床検体の結果を比較検証していくことで、慢性炎症から大腸がんの発症に関与するバイオマーカーを探索する。
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Research Products
(8 results)